
前回は、南米の大西洋岸に毎年大量に流れ着くマゼランペンギンのお話をしました。今回も、やはり南米の大西洋岸が舞台です。
南米東部、南米第2の大河=ラプラタ川の河口にウルグアイ東方共和国があります。かつてはイギリス、アルゼンチン、ポルトガル、ブラジルに支配されていましたが、1825年に独立を宣言、1917年にはラテンアメリカ最初の議会制民主主義国になりました。
人口は135万人ほどですが、年間175万人の観光客が訪れ、春から秋にかけては海岸リゾートが大繁盛します。今も、次々に高級リゾートが建設され、隣国のアルゼンチンやブラジルから、富裕層が大挙して押し寄せます。特に、海岸近くのリゾートマンションから、直接ホエールウォッチングできたり、漁港で野生のオタリアに餌やりできたり、気軽にマリンスポーツを楽しめる等、海洋生物ファンマリンスポーツファンには大人気の観光地です。
ということは、それだけ「野生動物が豊かだ」ということです。アルゼンチンやウルグアイの東方沖合いは、南からの豊かなフォークランド海流=寒流に乗って移動する多くの海洋生物がいます。特に、ラプラタ河口沖は、北からのブラジル海流=暖流と、ラプラタ川の淡水、それにフォークランド海流がぶつかり合う「潮目」ができるため、プランクトンが多く、それを求めて多くの群集性の魚類が集まってくるのです。


リチャード・テソールさんは、このウルグアイの海岸、ピリアポリスでもう15年以上も、海洋生物の救護活動を続けていらっしゃいます。助けた動物もいろいろ。マゼランペンギン、キングペンギン、イワトビペンギン、南アメリカオットセイ、南極オットセイ、オタリア、 ヒョウアザラシ、ミナミゾウアザラシ、ラプラタカワイルカ等…。
施設の正式名称は「SOS海洋生物救護センター」。波打ち際からわずか数十メートルの距離にある施設には、私が訪れた時、22羽のマゼランペンギンが収容され、治療・給餌を受けながら、再び海に還される日を待っていました。私も、餌の準備、餌やり、掃除等を手伝いましたが、多いときには、数十羽を同時にケアしなければならず、その作業はとても苛酷です。
まだ、世界的に景気が良かった時には、大企業から寄付された日本製の車(ピックアップ)で動物を運んでいました。しかし、最近は、餌代を確保するため、車を手放さざるを得ず、施設の維持に大変な苦労をしている状態です。
そういう中、今年も「マゼランペンギンのリリース(自然に還す作業)」が、無事行われました。短い期間でしたが、私が面倒をみたペンギンたちも、みな元気で故郷の海に還っていったようです。
ウルグアイの人々の地道な努力が、大西洋の海洋生物を守る、重要な役割を果たしているのです。





上田一生(うえだ かずおき)
1954(昭和29)年、東京都出身
國學院大學文学部史学科卒業
現職:目黒学院高等学校教諭(教科担当:地歴公民科)
ペンギン会議創設メンバーであり、今なお研究員として幅広い活動を行っている。
主な著書に
『ペンギンコレクション』平凡社、1998年
『ペンギンは歴史にもクチバシをはさむ』岩波書店、2007年 など