「クーちゃんって、食べてるか、寝てるかのどっちかねぇ」。
買い物帰りのご婦人が、ため息まじりにそう言った。「あんなに食べてメタボにならないのかしら」と。
もちろんグルーミング(毛づくろい)や遊び、姿をくらます--などの活動もないではないが、1日の大半の時間を「食う」「寝る」に費やしていることは間違いない。
天然水族館とギャラリー
釧路のホタテ
とにかくよく食べる。空腹のときは割とスリムな体型で、満腹のときは腹がぱんぱんにふくれている。ビフォア(食前)とアフター(食後)で、これほど違うものか、と驚くほど。最低でも3食、多いときには早朝から夜半まで何回にも分けて食べていた。
空腹
お腹いっぱい
クーちゃんが食事を始めると、「きょう3回目のショーが始まりました」などとアナウンスしてくれる奇特な人もいて、確かに食事はラッコ観察のクライマックスであった。それも実に見事な食いっぷりで、誰もが彼の一挙一動に目を細め、やさしいまなざしで見つめていた。
野生動物の生きる基本は、自給自足である。とはいっても、50~100秒潜っては、川底からお好みの餌をかき集めて来るだけ。たいていはツブやウニ、カニなどの高級魚介類で、実にグルメである。釧路川には漁業権が設定されていないので、漁師さんも大目に見てくれていたようだ。
美味しいツブ貝とラッコポケット
ズワイガニ 美味しそう
クーちゃんは、とても上品な“背泳ぎのテーブルマナー”を身に着けている。巻き貝であれば、平べったいお腹の上に貝を載せ、もう一つの貝を両手で振り下ろし、たたき割って中身だけを食べる。殻と破片は、ぐるりと横に1回転すると、水中に落ちた。すかさず胸のたるみにはさんでおいた別の貝を取り出してまた割る。それを目にも止らぬ早業で「割っては食べ」を繰り返すのだから、“海の魔術師”である。
ドラミングで貝割り食べる!しあわせ!
貝と貝バチャバチャぶつけて貝割り
ラッコは1日に体重の20~25%を食べないと生きていけない。クーちゃんの体重を30kgと仮定すると、1日に7kg前後。カロリー換算してみると、ざっと6,000kcal。ご飯50杯分に相当する。分厚い脂肪を蓄えたアザラシやトドとは異なり、皮下脂肪の薄いラッコが北の海で生き永らえるには、大量のカロリー摂取なしでは体温を維持できないのだ。
それでいてクーちゃんは、エンターテイナーでもあった。川底に潜って取って来た餌を観衆の目の前まで運んで、見せびらかすようにして食べた。猫がハンティングしたネズミを飼い主の所にくわえてくるのに似て、彼の食事パフォーマンスを楽しみにしている観衆を意識し、期待通りに実演しているかのようであった。(つづく)
マツブでドラミングスタート
貝を両手でおなかの貝へドラミング中
ツブ貝割り美味しくいただきます!
ヤドカリ大好き
赤貝どうぞ
フジツボおいしいよ
林田 定昭
1940年 | 釧路市生まれ。歯科医師 | ||||||||||
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*ラッコの写真はNHKテレビ(全国版)、フジテレビ(全国)HTB、UHB、STV、毎日新聞(全国版)、北海道新聞、釧路新聞、読売新聞、東京新聞、STVラジオで紹介される。釧路市住民票、クーちゃんモニュメント、商品券、モザイクアート写真、釧路川岸壁等多数採用されている。「ラッコの住めない海は人類も滅びる」「ラッコの保護は環境保護」を唱えている。