
スマトラ島には、スマトラトラをはじめたくさんのどうぶつたちがすんでいます。しかし、森の急激な減少のため、その多くが絶滅の危機にさらされています。ここでは、スマトラトラと、貴重な固有種や絶滅危惧種のどうぶつの1部に加え、その他のスマトラ島の生き物たちについてご紹介します。
まずは、本誌でも詳しくご紹介したスマトラトラ。スマトラ島にいると、いかに人々がトラを恐れているかが伝わってきます。トラが人里に現れるのは、たいてい森でえさを見つけられず、極限までお腹をすかせているとき。人がトラに襲われる被害も出ているため、地元の人々には恐ろしい「キラー」と呼ばれ、アンラッキーの象徴といわれています。トラに脅かされた人々は、トラを憎み、罠をかけて殺してしまおうとします。トラを殺すことは禁止されているため、秘密裡に殺して、漢方薬として中国に売りさばいてしまうということもあったようです。
現地では、トラを安全な森に移すリロケーションも行われています。スマトラトラは海外からの注目も高く、国や動物園、地元レンジャー、NGOなどが協力して保護対策を進めていますが、問題は複雑で、一朝一夕にはいきません。
スマトラトラがすめる森を救うことは、他の多くのどうぶつたちを救うことにもなります。スマトラトラは、スマトラ島の問題の象徴的存在といえるでしょう。
スマトラトラが現れた川。あまり暗くなると撮影も難しく、身の危険もあるので退散せざるをえなくなります。
夜間のスマトラトラ探索。森に光を当てて、目が光ったところを探ります。
こちらはスマトラサイ。スマトラ島をはじめ東南アジアにすむ原始的な小型のサイで、よく見るとからだに毛がはえています。野生では約200頭程度しか生息しないといわれています。
スマトラカモシカ。全身黒い毛に覆われ、長いたてがみがあるのが特徴です。
スマトラゾウ。ゾウたちの生息地の森に畑が作られ、すみかを奪われた野生象が人を襲う問題は、日本でもよく知られています。
スマトラオランウータン。オランウータンはスマトラオランウータンとボルネオオランウータンの2亜種にわかれ、スマトラ島とボルネオ島にしか生息していません。
ちなみに、スマトラ島にはオランウータンのほかに、オランペンデックという人にそっくりな幻の類人猿が存在するといわれています。日本にもよくある伝説のどうぶつのようですが、つい3、4年前にもヨーロッパの研究チームが数カ月にわたって大規模な現地調査を行ったとのこと。やはり見つからなかったようですが、毛や足跡を見つけたという話も…。もしかしたら、いつか大発見があるかもしれませんね。
こちらは現地で「カンチル」と呼ばれているジャワマメジカです。本誌でも少し紹介しましたが、カンチルは現地ではとても賢いどうぶつといわれ、面白い昔話がいろいろと残っています。後に紹介するスマトラ島の動物園の園長の話によると、そのひとつに、ワニが川辺にいたカンチルを襲おうとしたとき、カンチルが「ちょっと待って。君たちの数を数えてあげよう」と申し出て、ワニを川に並べ、その上を飛び移りながら数を数えて、しまいには安全な向こう岸に渡ってうまく逃げたという話がありました。どこかで聞いた話ですね。そう、因幡の白兎です! 話の発祥は中国あたりでしょうか?
畑の近くでよく見かけるイノシシです。害獣として問題になっていますが、スマトラ島の人の多くはムスリムなので、ブタは食べません。そこで犬に追わせ、捕獲したイノシシは犬のえさとして与えるとのこと。毎週日曜日には、大勢の犬をつれたイノシシ追いの人々にも出会います。
こちらはマレーグマが採食した跡。木の中にあるミツバチの巣からはちみつをとるため、長いツメを使って木を切り崩しています。中を除くと、はちみつがとられた後の巣の残骸がありました。夜、森の中でマレーグマがミツバチの巣をとるときには、労働中のマレーグマの「ハッハッ」という荒い息が聞こえてくるそうです。ぜひ聞いてみたいですね。
森の中で見つけたトカゲのこども。森にはたくさんのヘビやトカゲ、昆虫たちがいます。
そしてこちらはヒル! 森を歩いていて、気づいたら靴の中にこのヒルが…。血を吸って大きく膨らんでいます。スマトラのジャングルを歩くときは、ヒル避け対策を忘れずに。
木の上に作られたハチの巣。川辺の高い木などの安全な場所に、いくつもの巣が作られています。
森の中で出会った地元の子どもたち。川で魚獲りをした帰りです。みんな陽気で、釣りの道具や収穫を見せてくれました。