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Vol.5 『日本初のふたごパンダ出産』

2011.11.21

ジャイアントパンダの妊娠期間は三~五ヶ月、ほとんど毛も生えていない、目も開いていない、とても未熟な小さな赤ちゃんを産みます。母親は赤ちゃんを腕の中で抱いたままで、自分の事(食べる・寝るなど)もしなくてはいけません。とても難しい子育てをするパンダは、一頭の赤ちゃんを育てるのも至難の業です。自然界でパンダが絶滅の危機に瀕している原因の一つに、未熟な赤ちゃんを出産する事があげられています。また、パンダがふたごを産む確率は約五〇%といわれ、飼育下では、ふたごのほとんどが人工保育で成長しています。

 

 

二〇〇三年春、「永明(えいめい)」と「梅梅(めいめい)」にとって二回目の恋の季節がやってきました。「永明」との交尾が成功し、出産までの約一〇〇日の妊娠期間を待つだけです。「梅梅」は今回で三回目の出産。「今度こそふたご!」というスタッフの期待が高まります。とても小さな赤ちゃんを産むパンダはお腹が膨らまないので、妊娠しているのか、ましてふたごかどうかなんていう事は、見た目では分かりません。

 

 

二〇〇三年九月八日、午前中はいつもと変わらず竹を食べていた「梅梅」が、昼頃から急に苦しみ始めました。荒い呼吸音、爪で床や壁をかきむしる音が、動物舎の中に響きわたります。陣痛です。そして、スタッフ全員が見守る中、「梅梅」のお尻がググッと持ち上がり、「オギャー」と大きく元気な産声が上がりました。「梅梅」はすぐに赤ちゃんをくわえ上げ、太い腕で覆い、赤ちゃんを舐め始めました。ホッと一安心した私達ですが、まだ予断は許しません。二頭目が生まれてくる可能性があるからです。

 

 

とても小さく生まれてくるパンダは、ふたごの場合はさらにその育児は難しく、母親パンダは通常ふたごのどちらか一頭しか育てられないと言われています。中国ではふたごが産まれた場合、一頭を母親に抱かせ一頭を人間が預かり、母親の隙を見て赤ちゃんを交換し母乳を飲ませる「すり替え」という方法でふたごを育てます。私達も「梅梅」がふたごを出産した場合に備えて、一頭を預かる準備をしました。そして、一頭目の出産から約一時間後、赤ちゃんをしっかりと抱きかかえたまま、二頭目が産声をあげました。日本で初めてのふたごパンダの誕生です。私達の心配をよそに、「梅梅」は二頭をしっかりと抱き、おっぱいをあげます。そして「すり替え」をすることなく、ふたごはすくすくと成長しました。このふたごを母親だけで育てた例は、実は世界で初めての出来事でした。「梅梅」の母親としての素晴らしさをスタッフ一同再認識したのでした。

 

 

著者プロフィール

安田典功(やすだ・のりかつ)

1964年(昭和39年)6月4日生まれ 47才
新潟大学農学部畜産学科卒業
昭和63年アドベンチャーワールドへ入社
遊技機種のオペレーターを経て、
鳥類、霊長類、小型哺乳類、食肉類等の飼育を担当
平成20年よりジャイアントパンダ飼育担当となる。

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