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SAVE THE 雷鳥 vol.1

2011.5.2

本腰を入れてライチョウに関わることになりそうだ。しかも長期間。その射程はニホンライチョウの保全システムの確立までになるだろう。

発端は2009年の秋。場所はとある居酒屋。相手は上野動物園の小宮園長。

「山本とこで、ライチョウやんない。夏にノルウェーのトロムソ大学から譲ってもらったスバールバルライチョウなんとか増やせそうなんだ」

「ふむ、やる」

「ニホンライチョウが生息する複数県の動物園で分散飼育し、共同繁殖技術を確立し、早くニホンライチョウの保全事業に応用する仕組みを作ろう」

「ふむふむ、やるやる」

というわけで、富山市ファミリーパークのライチョウプロジェクトが胎動を始めた。上野動物園との情報交換を進める一方で、11月に上野動物園・東京大学で開かれた第10回ライチョウ会議東京大会にも参加した。ライチョウ会議への秋篠宮文仁親王殿下のご臨席や、生息県外で開催されることは初めてだった。大会宣言では、「行政、山岳関係者、動物園、地域住民との連携」や「生息域外における飼育技術の確立…スバールバルライチョウ(Lagopus  mutus  hyperboreus)を対象として進める」ことが明記された。

天下の上野動物園とは違い、富山市ファミリーパークは地方都市の動物園。フジテレビのドキュメンタリー番組「ザ・ノンフィクション」で、「日本一地味な動物園」とのタイトルで放映されたくらいだ。「やるやる」といっても先立つものがなければなにもできない。

しかし、そのサブタイトル「その野望と情熱の物語」にあるように、野望と情熱は上野動物園に引けをとらないものがあるのだ。

おりしも富山市は「環境モデル都市」の指定を受け、低炭素社会やエコライフの実現に正面から取り組んでいた。

その最先頭を走る森雅志富山市長に、私は、立山連峰に生息するニホンライチョウの保全を最終目的としたスバールバルライチョウの飼育下繁殖計画を説明した。

森市長は言った。

「わかった。ライチョウ、やろう。ノルウェーにも行ってこい」

地元紙・北日本新聞は、2010年元日の社会面トップに富山市ファミリーパークのスバールバルライチョウへの取り組み記事を4段ぶち抜きで掲載した。

全紙も連続してこのプロジュクトを掲載した。富山新聞は社説にも取り上げた。“富山”と“ライチョウ”の結びつきの県民の心の強さを改めて実感させられた。

これは生半可な気持ちではやれない。ふんどしをしっかり締めてかかろう、と私は思った。

1月28日、2010年度予算市長復活要求で、「ライチョウについては私が説明します」と、市長自らが復活要求説明をしてライチョウ関係予算がついた。

2月1日、市長定例記者会見で、スバールバルライチョウが生息するスバールバル諸島現地生息調査とノルウェートロムソ大学への派遣を含めた、ライチョウ保護増殖事業が公表された。

ことは動きだした。

 

著者プロフィール

山本茂行(やまもと・しげゆき)

富山県高岡市出身。05年から富山市ファミリーパーク園長。10年から、社団法人日本動物園水族館協会会長に就任。珍しい動物だけでなく、日本の身近な動物の展示に力を入れた。園内に豊かな里山の環境を残し、地元にすんできたウサギやタヌキを飼育。昔から人を助けてきた在来馬と農作業を体験するイベントを開くほか、里山保全活動、クマやシカの被害など、現在の人と動物のかかわりについても積極的に発言する。生き物以外の歴史や文化、特に芸術面においても造詣が深く、料理の腕もプロ級。

著書には『ファミリーパークの仲間たち』ほか、Nikon機関誌『Nikkor Club』にも大好評連載中など多数

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