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Vol.6 アジアの動物園との国際連携

2013.1.15

これまで、動物園内で歩きながら考えていることや、その考えに大きな影響を与えている先達の話をしてきました。そろそろ、先達の話を引用して嘆くばかりではなく、動物園の将来へ向けた自分自身の考えを明確に示すべき時かもしれません。たとえば、古賀忠道さんに関する文章(vol.4)の最後で述べた、動物園の将来的展望や国際的視野の必要性に関する考えです。まず、後者の国際的視野や連携の必要性に関して、最近、ショックを受けた例をお伝えしたいと思います。

昨年末、台北市動物園で開催された『2012亞洲野生動物域外保育族群管理研討會(Regional Species Management among Asian Zoos Conference)』に招かれ講演したのですが、同会議に参加していた台湾のみならずシンガポール、タイ、マレーシア、香港の動物園関係者が、同じく講演した欧米の人たちと流暢な英語で自由闊達に議論しているのを目の当たりにして、愕然としてしまいました。その前日まで開かれていた保全繁殖専門家グループ(CBSG)による個体群管理トレーニングのワークショップ(Studbook and Population Management Training Workshop)でも、飼育係が通訳など介さずに英語だけで議論していました。日本の動物園では見たことのない光景でしたし、大学でさえめったに経験しないことだったので、その衝撃は大きかったのです。

なぜ、これほどまで英語で自由に議論することが可能なのか、主催者である台北市動物園の金園長に尋ねてみました。ここに至るまでには、ある程度の年数と努力が必要であった、というのが彼の回答でした。そして、その努力とは、近隣諸国の動物園間での職員交流や定例会議の開催であったようです。アジアという多言語国家でのコミュニケーションには、統一言語として英語を選択せざるを得ません。彼らが躊躇なく英語で会話できる背景には、そのような国際交流があったのです。

その交流の輪に、日本が積極的に入っていないのが心配です。日本の動物園がアジアの先進的な立場にあるという意見を持っているなら、それは全くの誤解で、実は取り残されつつある存在、もしくは既に見放された存在だという方が正しいかもしれません。

欧米先進国の動物園を真似るのも悪くはありませんが、もっと近くにあるアジア諸国の動物園と連携し一緒に学ぶのは、すごく大切なことだと思っています。そのような思いから、アジア圏の動物園の知人を招いて、野生動物の感染症に関する国際シンポジウムを企画しました。このシンポジウムを新たな起点として、これまで以上にアジアの動物園間での交流を深めてゆきたいと考えています。

著者プロフィール

村田浩一(むらた・こういち)

1952年神戸市生まれ。
1978年から2001年まで、神戸市立王子動物園で獣医師として働く。
2001年、日本大学生物資源科学部へ転職し、2011年からは、よこはま動物園ズーラシア園長を兼務。日本野生動物医学会会長(現顧問)、IUCN/Wildlife Health Specialist Group東アジア地区委員長。専門は野生動物医学、動物園学。楽しく学べる動物園を目指して、日々、動物園内で主に楽しんでいる。趣味は、自然の中で静かに佇むこと。

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