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Vol.2 危険ザメの正体

2011.7.2

ジョーズに代表されるサメの姿は、人々に恐怖心を植え付けました。サメは人間にとって、どの位危害を与える存在なのでしょうか?

ISAF(International Shark Attack File)によれば、2010年の1年間に全世界で報告されたヒトに対する襲撃は、79件とされています(非挑発的攻撃)。そのうち、生命に関わる襲撃例は6件報告され、そのうち少なくとも3例はホホジロザメによる攻撃であろうと推測されます。

ホホジロザメの上顎歯.縁辺に鋸歯(のこぎりの歯)状の突起が存在する.このようなギザギザの歯を持つサメには要注意.

過去に発生した致命的な事故の約半数が、このホホジロザメによるものでした。このほか、イタチザメとオオメジロザメによる被害が多く、これら3種の被害が全体の84%を占めています。このほか、メジロザメ類やアオザメなどの被害が報告されていますが、きわめて少数です。したがって、サメによる致命的な被害が発生する場合、その原因はこれら3種に限定されると言ってもよいくらいです。日本では、本州・四国・九州・北海道沿岸においてはホホジロザメの危険性が高く、沖縄を含む南西諸島ではイタチザメやオオメジロザメに対する注意が特に必要となりますが、一体どの程度警戒すべきなのでしょうか?

サメの被害で最も多いのが沖合でのレジャー、例えばサーフィンや遊泳など、海の沖合い・表層での事故です。次いで潜水漁や潜水業務など海底での事故が多く、レジャーダイビングや海岸での死亡事故はあまり多くありません。事故を抑制する最大の要因は、サメとの遭遇を避けることと、サメの早期発見です。サーフィンや潜水漁で事故が多い理由として、周辺への注意が甘くなることや、単独での行動によって発見が遅れることが原因と思われます。

危険度「隠れNo.1」のサメ:オオメジロザメ.熱帯海域に分布し、淡水域にまで侵入する大型の危険ザメである.

サメの被害について述べましたが、「サメ」を過度に危険なものとして扱うことは、あまり感心できません。例えば、海水浴へ出かける場合、海で溺れたり、往復の道中における自動車事故に遭遇する確立は、サメに攻撃を受ける確立より数十倍またはそれ以上になります。また、ライフセーバーが常駐する海岸では、危険を事前に察知することが可能で、万が一の場合でも助かる可能性が高いと思われます。

確かに、危険な一面を持つサメは存在しますが、サメを正しく認識し節度を持って海と接する限り、サメによる事故の確率を最小化することが出来ます。もともと生活圏が異なる動物である人間とサメが、地球上で共存することは可能なはずです。

著者プロフィール

佐藤圭一(さとう・けいいち)

1971年 千葉県生まれ(高校まで栃木県で育つ) 
2000年 北海道大学大学院水産学研究科 博士後期課程修了・博士(水産学)
同年 (社)沖縄海洋生物飼育技術センター(旧国営沖縄記念公園水族館)
現在 沖縄美ら海水族館 魚類課 深海系係長(主に深海性魚類の飼育・開発を担
当)
専門は深海性サメ類の比較形態学・系統分類学、現在はサメやエイ類の繁殖や生態に
関する調査も行っている。
著書 水族館の仕事(東海大学出版会・分担執筆)など

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