日本全国の動物園と水族館をつなぐ情報誌、「どうぶつのくに」「どうぶつえんとすいぞくかん」公式Webサイト

どうぶつのくに どうぶつえんとすいぞくかん

Vol.2 エゾゲンゴロウモドキ

2016.10.16

和名:エゾゲンゴロウモドキ
学名:Dytiscus marginalis czerskii

エゾゲンゴロウモドキ雄

エゾゲンゴロウモドキ雄

 ゲンゴロウの仲間なのにモドキという名がつく本種は、ゲンゴロウとは違う仲間なのですか?という質問をよく受けますが、30mmを超えるれっきとした大型のゲンゴロウの仲間になります。
 ゲンゴロウモドキ属は北方種で、日本にはゲンゴロウモドキ(Dytiscus dauricus zaitzevi)、エゾゲンゴロウモドキ(Dytiscus marginalis czerskii)、シャープゲンゴロウモドキ(Dytiscus sharpi)が確認されています。ただ国内でも生息地が限られています。ゲンゴロウモドキ属の特徴として、前頭部にV字模様があり、ゲンゴロウと比べると肢が長く泳ぎがあまり上手ではありません。

エゾゲンゴロウモドキ(雄前頭部のV字模様がゲンゴロウモドキ属の特徴)

エゾゲンゴロウモドキ(雄前頭部のV字模様がゲンゴロウモドキ属の特徴)

 ゲンゴロウモドキは、北海道、青森県の一部、エゾゲンゴロウモドキは北海道、東北地方、栃木県(生息地南限)、シャープゲンゴロウモドキは千葉県、新潟県~島根県にかけての日本海側で生息が確認されています。その中でもシャープゲンゴロウモドキは2011年4月1日、「種の保存法」に基づき、「国内希少野生動物種」に指定され、保護されるようになりました。

 福島県にはゲンゴロウモドキ属はエゾゲンゴロウモドキのみが知られています。本種は東北地方で唯一生息が確認されていない県でしたが、2008年に発見されました。
エゾゲンゴロウモドキは、体長33mmほど、大型のゲンゴロウで、前胸背の周縁、上翅の両側側縁部は黄色く縁取られています。雄の上翅は光沢が強いですが、雌は上翅前2/3ほどに各10条の深い縦の溝があるため、雌雄の区別はしやすいです。ただし、一部の地域では雌に溝を有しない個体も確認されています。生息環境は山間部のため池、染み出し水を有する水たまりなどで見ることができますが、地域が局所的で個体数もあまり多くありません。

エゾゲンゴロウモドキの生息環境

エゾゲンゴロウモドキの生息環境

エゾゲンゴロウモドキ雌(有溝)

エゾゲンゴロウモドキ雌(有溝)

エゾゲンゴロウモドキ雌(無溝)

エゾゲンゴロウモドキ雌(無溝)

エゾゲンゴロウモドキの繁殖期は一般的に4月~8月ぐらいまで、地域によりだらだらと続きます。青森県の本種の生息地では10月中旬に初令から3令幼虫まで見ることができたことから、9月にはいっても産卵していることが想像できます。北方種ということもあり、冬期も氷下で活動している様子も飼育下で観察できます。ゲンゴロウモドキ属は交尾が完了すると、白色の柔らかい物質が交尾器からはみ出して付着しています。この栓は他のオスとの交接を阻害する働きがあると考えられています。産卵は、水草の茎に産卵管を差し込み産み付けます。卵はゲンゴロウとは違い、高水温に弱い為、産卵期は水温を20℃以下に保つことが管理する上で重要となってきます。ただ卵から幼虫になると、水温はほとんど気にせずに飼育することができます。

腹部末端に交尾嚢のようなものを付けたエゾゲンゴロウモドキの雌。この機能はわかっていない。

腹部末端に交尾嚢のようなものを付けたエゾゲンゴロウモドキの雌。この機能はわかっていない。

幼虫はゲンゴロウ属に比べ頭部が大きく、ずんぐりしています。性格はゲンゴロウと同様、非常に獰猛で動くものになんでも反応します。そのため幼虫同士を同じ容器で飼育していると共食いが発生するため、個別で飼育することが望まれます。自然界では多足類のミズムシ、オタマジャクシ、サンショウウオの幼生などを好んで捕食しており、フィールドでそういった環境に出会うと本種の生息に期待感が増します。

エゾゲンゴロウモドキ終齢幼虫

エゾゲンゴロウモドキ終齢幼虫

アクアマリンいなわしろカワセミ水族館では、飼育水は山水の利用のため、年間通して12-13℃前後と、本種を飼育する上では非常に適しており、今年度より累代繁殖を進めています。今後は県内の生息分布が明らかになっていないため、域外保全をしながら県内の生息状況の把握に努めています。

著者プロフィール

平澤 桂 (ひらさわ・けい)

1976年東京都出身
1999年11月アクアマリンふくしま入社
2015年4月アクアマリンいなわしろカワセミ水族館異動
同館のリニューアルオープンの立ち上げに携わる。

淡水生物全般を担当。
現在は福島県内の水生昆虫を中心としたフィールド調査をライフワークとしてます。水辺の生き物を通して、多くの来館者に身近な生き物、自然環境について考えるきっかけになるような展示を作り続けていきたいです。

カテゴリー

カテゴリー一覧

このカテゴリーの他の記事

ページTOPへ

Copyrights © 2010 Doubutu-no-kuni All Rights Reserved.
誌面、Webにおけるあらゆるコンテンツの無断複写・転載を禁じます。