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ウミガメ〜500万年目の危機

2011.3.25

浦島太郎の民話をはじめ、日本でもなじみの深いウミガメ。しかし、近年、捕獲や環境の悪化などで生息数が減少し、IUCN(国際自然保護連合)が作成した2006年度版レッドリストではアカウミガメ、アオウミガメが絶滅危機に指定されている。 両前肢がないアカウミガメ「悠ちゃん」に人工ヒレを付けるプロジェクトをすすめるNPO法人「日本ウミガメ協議会」(大阪府枚方市、亀崎直樹会長)の研究員、石原孝さんに日本のウミガメの状況について寄稿してもらった。

日本にウミガメなんていない、いても沖縄など温かい海だけだ、などと思っていないだろうか。 実はウミガメは日本中の海にすんでいる。たしかに温かい海の方が数は多いが、北海道でも見つかることはあるし、夏になれば茨城県や宮城県の砂浜でも産卵することがある。 日本のまわりには5種類のウミガメが生息し、そのうち3種類は日本の砂浜で産卵する。  産卵のために最も多く砂浜へ上がってくるのは甲羅の長さが1メートル、重さが100キロを超えることもあるアカウミガメだ。 ちょうど日本くらいの温かさが好きなウミガメで、太平洋の北半球側では日本でしか産卵しない。  太平洋の反対側、はるか1万キロ先のアメリカ大陸の近くにもアカウミガメはいるのだが、これは日本で生まれた子ガメが黒潮に乗ってはるかな旅をしてたどり着いている。 そして、メキシコ沖で十数年から数十年を過ごした後、はるばる日本まで戻り、準備ができたら卵を産み子供を残す。  こうしたアカウミガメの姿は日本ウミガメ協議会などの調査・研究によって明らかにされてきた。日本というのはウミガメがいないどころか、日本を頼りにしたアカウミガメがいるほど、実に豊かな海を持つ国なのだ。

アカウミガメをはじめとした現生のウミガメの仲間4種の化石が米国フロリダ州の500万年前の地層から見つかっている。少なくとも、それからの長い時間を変化(進化、退化)することもなく、脈々と地球上で子孫を残してきているわけだ。大きな変化がないということは、それだけ自然の環境に適応して、自然の変化にも動じることがなかったのだろう。

しかし現代になって、このウミガメの仲間の大半は絶滅が心配されている。人間活動の影響があることは間違いない。 私たちもいろいろと対策をたて実施しているが、日本のウミガメはまだまだ存続が安心できるレベルではない。500万年も生き残ってきたウミガメすら生き残れない海が、豊かな海といえるのだろうか。ウミガメが健全に子孫を残し続けることは、人が豊かな海に囲まれ豊かな心で生活することにもつながっている。私たちのためにも、私たちの子供や孫のためにも、豊かな海とそこにすむウミガメを残していくために日本ウミガメ協議会は活動している。

ウミガメの仲間たち、大海原に旅立つ子ガメたち


◇プロフィール 日本ウミガメ協議会 ウミガメの研究者らでつくるNPO法人。ウミガメ類を取り巻く自然環境の保全というテーマに関して、ウミガメ類の保護や研究活動を行っている民間団体及び個人、または関連機関などと相互の連絡を図りながら、ウミガメ類の研究及び保護活動に取り組んでいる。

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