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Vol.1 “ありえない動物”ハオリムシのいる日常

2017.6.5

 動いて、エサを食べて、うんちをして…。“動物”といったら、そんな姿を思い浮かべるのではないでしょうか?
 ところが、そんなイメージとはまるで反対の、“ありえない動物”がいるのです。ほとんど動くことはなく、口がないのでエサを食べない、おしりの穴がないからうんちもしない。  ハオリムシ。ほとんどの方が見たことも聞いたこともないかと思いますが、れっきとした動物で、ミミズやゴカイと同じ環形動物というグループに分類される海洋生物です。
 この連載では、ふしぎな動物ハオリムシの知名度や魅力を、少しでも多くの方に広めていきたい!そんな意気込みで、ハオリムシのことや、ハオリムシを飼育・調査する日々について、つづっていきたいと思います。

 

 

 最初となる今回は、ハオリムシとはいったいどんな姿かたちの動物か?ご紹介しましょう。写真は鹿児島湾などにすむ、サツマハオリムシです。
 木の枝のような薄茶色の管一本一本がハオリムシ一匹一匹で、枝の先からは白いラッパのついた赤いネギ坊主のような形の物がのぞいています。この赤いネギ坊主は、振動を与えると、するっと管の中に引っ込みますが、しばらく経つと、またゆっくりと出てきます。
 大きさは種によっていろいろですが、ガラパゴスハオリムシという最大種は、管の長さが2 mを越え、直径も3~4 cmになるといいます。サツマハオリムシも長さは2 mを超えることがありますが、直径は8 mmほどと、細身です。
 この「棲管」と呼ばれる管は、ハオリムシが自分で分泌する物質で作った巣のようなもの。中にはやわらかく細長いハオリムシの本体(虫体)が入っていて、赤いネギ坊主は虫体の先端にあたり、呼吸をするための「鰓」です。鰓の上にある白いラッパは少し硬く、ハオリムシが棲管に引っ込んだ時、ちょうど蓋になる部分で、「殻蓋」と呼ばれています。
 ハオリムシは一生を棲管の中ですごし、体全体が外に出てくることはありません。

 実はハオリムシのほとんどは200 m以深にすむ深海生物です。今から約40年前、ガラパゴス諸島沖の海底温泉で、ガラパゴスハオリムシの大群集が発見されました。この発見は、生物が少ないと思われてきた深海の定説を大きく覆し、世界から注目されることになったのです。しかも、海底温泉周辺は硫化水素という毒がたくさんあり、普通の生きものは寄りつけません。とにかくあらゆる面で常識破りのハオリムシ。
 ハオリムシ。外見はちょっと地味だけれども、その魅力を少しでも感じていただけたのであれば、幸いです。

 次回は外からは見えない棲管の中を覗いてみましょう。ハオリムシがエサを食べなくても大丈夫なひみつに迫ります!

著者プロフィール

八巻 鮎太(やまき・あゆた)

1984年神奈川県生まれ。北里大学水産学部卒業。広島大学大学院博士課程後期単位取得退学。
2012年よりかごしま水族館で勤務。魚類、無脊椎動物の担当。
学生時代はハオリムシの生態について研究。現在は他機関との共同研究を進めながら、ハオリムシの普及と知名度向上に努める。趣味は岩登り。

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