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Vol.3 “ありえない動物”ハオリムシのいる日常 3回目

2018.3.22

 “ありえない動物”ハオリムシのヒミツに迫る本連載。3回目となる今回は、ハオリムシの展示について紹介します。
 これまでは、ハオリムシがどんな生きものか?また、からだのしくみついて触れながら、どんな生き方をしているのか?紹介してきました。
 今回はそんなハオリムシの展示について、紹介していきたいと思います。

 かごしま水族館では1997年の開館当初からサツマハオリムシの展示を続けてきています。当時はハオリムシ類が発見されて間もなく、またサツマハオリムシも新種として記載されたばかりでした。もちろん世界初のハオリムシ類の生体展示となり、注目されました。
 しかし、サツマハオリムシは地味な外見の生きものだけに、あまり“展示映え”しないことは事実で、ハオリムシの展示コーナーはなかなかじっくり見てもらえないという状況が続いていたようです。
 とはいうものの、ハオリムシには「口がない」、「毒を“食べる”」など、驚くべき魅力があることはこれまでお伝えしてきた通りです。反面その面白さを伝えるには、やはりある程度の解説が必要という、一筋縄ではいかない悩みがつきものです。
 水族館や博物館を訪れた際、文字ばかりの展示パネルに書いてある解説すべてを事細かに読む方は少ないかと思います。私も大抵は読みません。しかし、好奇心をかきたてられ、「もっと知りたい!」と思った時は、多少長い解説でも読んでみようと思うものです。
 そこで、来館者にハオリムシの展示コーナーに入ってもらう第一歩は、興味を持ってもらうことだと考えました。一昨年の2016年12月から、ハオリムシ展示コーナーの一番目立つ中央に、ハオリムシそのものではなく、ハオリムシの大きなぬいぐるみを置くというかたちに展示変更しました。「あれ何?」と思ってもらい、コーナーの中に誘導するのがねらいです。

 そしてその上に、子どもでも読めるくらいの分量で、ハオリムシのキャッチ―な特徴を紹介する「ハオリムシ大解剖!」パネルを用意しました。

 サツマハオリムシの生体は、その奥の水槽に生態や体構造など詳しく解説するパネルと共に、展示しています。

 展示変更の甲斐あってか、小さな子どもたちがぬいぐるみで遊んでいる姿をよく目にしますし、「ハオリムシ大解剖!」パネルを読んでいる方も見かけます。当たり前のことを行っているだけなのかもしれませんが、難解なイメージの付きまとうハオリムシを、少しは身近に感じてもらえるようになったのではないか、と愚考しています。

 余談ですが、先日、趣味のクライミング関係の知り合いの方から、「かごしま水族館の推しはサツマハオリムシでしょ?」と言われました。その方は学生時代に年間パスポートを持っていて、かごしま水族館をよく訪れていたそうです。しかし、学生時代の専門も今の仕事も、水族館はもとい、生きものとも全く関わりがありません。まさかそんな方の口から「ハオリムシ」の名前が出てくるとは思わず、とても驚きました。
 もしかすると、サツマハオリムシは地元鹿児島において、私の浅はかな思い込みよりも、ずっと広く確かな市民権を得ているのかもしれません。

 次回はサツマハオリムシの地元、鹿児島だからこそできた、ハオリムシだけで特別展をくむという、ちょっと勇気のいる企画「錦江湾の大発見 サツマハオリムシの生き方に迫る」を紹介していきたいと思います。

著者プロフィール

八巻 鮎太(やまき・あゆた)

1984年神奈川県生まれ。北里大学水産学部卒業。広島大学大学院博士課程後期単位取得退学。
2012年よりかごしま水族館で勤務。魚類、無脊椎動物の担当。
学生時代はハオリムシの生態について研究。現在は他機関との共同研究を進めながら、ハオリムシの普及と知名度向上に努める。趣味は岩登り。

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