日本全国の動物園と水族館をつなぐ情報誌、「どうぶつのくに」「どうぶつえんとすいぞくかん」公式Webサイト

どうぶつのくに どうぶつえんとすいぞくかん

福岡メガマウスの記録と記憶 Vol.29 標本水槽展示に3つの大問題勃発

2015.8.26

世界初のメスのメガマウスは、ホルマリンによる水槽標本展示をすることは決まっていたのだが、あと先考ええずにそう思って進めてきた。なにせ、これまでに展示されているのは、世界初の個体がハワイのビショップ博物館が床掘りで上から見るだけの方式で、総アクリルで全身を見ることができるのは、福岡の個体が世界初なのだから是が非でもこうしたかったのだ。ところが、大問題が発生した。まず最初の1つはアクリル水槽の納期だ。解剖から展示まで2ヶ月もない。もちろんその前から水槽の形状等は検討してきたが、メーカーからは最低3ヶ月は必要とのこと、また年度末もあり納期の約束が厳しいとのこと。そこをなんとか、となると2つ目の問題の制作費だ。他の生産ラインを停めて優先すると価格に響く。そこで見積もりをとると、有に1千万円は超えてしまった。そんな高額になるとは予想もしていなかった。それでも少しでも安くと相見積もり。電話で複数社と交渉。某メーカーには無理を言って、電話1本で300万円を値切った。それを横で聞いていた部下が「電話1本で300万円も引かせたんですか!!」と驚いていた。なんとか最安値で発注できたが、次なる決定的な大問題は、水槽は5メートル×1.5メートル×1.5メートルあり、液体を入れるとその総重量が13トンにもなって、館内に設置できる場所がないかも・・。ということなのだ。すでに増築工事は建築が終わっており、通常の床荷重設計は1平方メートルあたり250キロしかない。最初から標本をおくことが分かっていればそのような床を作ったのだが、今更無理なのだ。あわてて設計者とどこかないかと苦戦することになった。熟考の末、唯一、置ける場所が、今の展示位置なのだ。ここは床下に大きな梁が通っており、またその直下に2本の柱があることが判明。設計者曰く「ここから1センチもずれたらダメ」とのことで、ミリ単位の調整で水槽を載せる台が置かれる。標本はお客様が入ったすぐ目前のエントランスホールにあるが、意図してこの場所になったのではなく、建築的な制約でこの場所しかなかったのだ。なんという幸運なのか。期せずして世界初の総アクリル水槽での展示は増築オープンの大きな目玉となって最初にお客様を出迎えることになった。

1 2 3

著者プロフィール

高田浩二(たかだ・こうじ)

1953年大分県生まれ。
1976年、大分生態水族館入社。
1988年、現職場に転職、同館の設立に携わり2004年より館長。日本動物園水族館教育研究会会長。専門は博物館教育、魚類学。
「水族館は教育機関」をモットーに、日々、社会教育機関としての水族館のあり方を追求している。

カテゴリー

カテゴリー一覧

このカテゴリーの他の記事

ページTOPへ

Copyrights © 2010 Doubutu-no-kuni All Rights Reserved.
誌面、Webにおけるあらゆるコンテンツの無断複写・転載を禁じます。