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Vol.42 生き物・学び・研究センターの新メンバー!!

2017.8.28

 すでにご存じの方もいらっしゃると思いますが、2017年6月1日付けで、京都市動物園 生き物・学び・研究センターに新しいメンバーが加わりました。すでに3か月が過ぎようとしており、今さらな気がしますが、まだこの連載でお知らせしていませんでしたので、この機会に書きたいと思います。

 京都市動物園には、生き物・学び・研究センターというセクションがあります。その名のとおり、教育普及的な仕事と、飼育下の野生動物の研究を行っています。生き物・学び・研究センターは4年前、2013年4月に京都市動物園に設置されました。ただし、発足当時はセンター長の私と、獣医師で学芸員の係長(後に課長補佐)の2名しか専任スタッフはおらず、それぞれが得意分野を活かしながら、お互い協力して4年やってきました。
 その努力が実り、今年の6月、あらたに常勤の主席研究員に加え、いわゆるポスドクに相当する非常勤の研究員、さらにセンターの活動を補佐してくれる非常勤嘱託員がスタッフに加わりました。今後はセンターの研究活動をさらに進めるために、大学や研究所、博物館のように科研費の申請ができる学術研究機関としての指定を受けるべく、準備を調えているところです。

6月1日、門川大作 京都市長(写真中央)から新たにスタッフに加わった3人に辞令が渡されました。(生き物・学び・研究センターのHP:http://www5.city.kyoto.jp/zoo/crew より)

 ここで改めて、生き物・学び・研究センターの京都市動物園における研究活動を紹介します。まず、2008年から継続している「サルのお勉強」です。動物園の「サル舎」にタッチモニターとパソコンを持ち込んで、数字の順番を覚える学習課題をやっています。お客さんからも見える場所でやっているので、掲示物で目的や進捗状況をお知らせするとともに、毎月「サルのお勉強のお話」と題するトークイベントも行ってきました。写真のマンドリルのケージの向かいにはシロテテナガザルがいて、交互に課題をやってもらいます。これは、動物園でしか飼育していない希少種の認知能力を調べる研究としてだけでなく、動物たちにとっては頭を使って報酬を得られる環境エンリッチメントとして、さらにお客さんにこの種のもつ能力を直接見てもらえる「知性の展示」としての役割も持たせています。2009年からはチンパンジー、2014年からはゴリラでも同じ課題を始め、現在も継続中です。

 新しく加わった研究員も、この「お勉強」を分担してもらえるようになったおかげで、私に時間がない日でも実施可能になりました。今後、京都市動物園を訪れてくれる皆さんに彼らの知性の輝きを見てもらえると思います。ただし、「お勉強」はあくまで参加する動物たちの自発的な意志によって行うものなので、本人がやる気がない日には全然やってくれないこともあります。たとえ食べ物をもらえても、やりたくないときにはやらない。遊びに夢中になっているときには見向きもしない。そんな姿も霊長類らしさでもあるので、どんな姿であれ、魅力的に映るのではないでしょうか。

 さて、新しく加わったスタッフ、とくに研究員の皆さんには自分の研究も企画し、進めてもらいます。せっかく動物園でやるのならば、そのことをお客さんに伝える機会を設けたり、理解が進む工夫もしてもらえると思います。また、それぞれの得意分野を活かした教育プログラムなども企画してもらえたらと思っていますし、夢は広がっていきます。

 夏休みには、博物館学芸員資格を取得するための実習を毎年引き受けているのですが、新しいスタッフで企画し、実習生らとともに、環境エンリッチメントの実践と評価を行ないました。

これはひとつの例にすぎません。新しいスタッフとその知性が加わったことで、これまでアイデアだけに終わっていたことも、実際に企画して実践することが可能となりました。 これからの京都市動物園を、研究と教育の場として注目してください。 京都市動物園のHP: http://www5.city.kyoto.jp/zoo/ 生き物・学び・研究センターのHP: http://www5.city.kyoto.jp/zoo/crew

著者プロフィール

田中正之 (たなか・まさゆき)

京都市動物園 生き物・学び・研究センター長
学位: 博士(理学)
著書: 田中正之「生まれ変わる動物園 -その新しい役割と楽しみ方-」化学同人選書(2013年)

1968年 神戸市生まれ(子どもの頃行った動物園は王子動物園)
1991年 大阪大学人間科学部卒業
  京都大学霊長類研究所の大学院[理学研究科霊長類学専攻(当時)]入学
1995年 同専攻博士後期課程中退。
    (財)東京都老人総合研究所に就職(東京都の職員でした)
1997年から 京都大学霊長類研究所 思考言語分野助手
2008年から 京都大学野生動物研究センター 比較認知研究部門准教授
2013年から 現職

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