日本全国の動物園と水族館をつなぐ情報誌、「どうぶつのくに」「どうぶつえんとすいぞくかん」公式Webサイト

どうぶつのくに どうぶつえんとすいぞくかん

Vol.1『はじめまして、怠けず頑張ります。』

2019.10.14

皆さん、初めまして。高知県立のいち動物公園の隈田夏子と申します。
「どうぶつのくに」vol.127で紹介して頂いたフタユビナマケモノの担当をしています。その関係でお声をかけて頂き、恐れ多くもこのような場でつらつらと書くことになりました。つらつらと、と偉そうに言っていますが、先人たちの連ねたコラムを見て、そんなに濃く面白く書けるかいな…と早くも戦意を喪失しかけています。が、ナマケモノの名誉のためにも頑張ります。よろしくお願いします。
初回の今日は、のいちのナマケモノ事情と担当のマニフェストを聞いていただきたいと思います。
現在のいち動物公園で飼育されているのは4頭のフタユビナマケモノです。現在展示場で暮らすのは、20年以上に渡ってのいちのナマケモノの繁殖に貢献してきた父「アミーゴ」、愛くるしい顔ながら4頭の子どもを出産し育てた母「キュウ」、今年の6月に2頭の4番目の子どもとして生まれた「ハク」の親子3頭です。この3頭はどうぶつのくに本誌にも紹介されました。さらにこの他にもう1頭、バックヤードで暮らす雄の成獣、「ボニート」がいます。伸びた上顎の犬歯が下唇に貫通している、とても草食動物に見えない極悪顔をしています。彼らが繰り広げる、スローながらも起伏に富んだ日々も随時ご紹介していこうと思っています。

独り身、バックヤード暮らしのボニート。右上の犬歯が下に突き抜け、口ピアス状態という個性尖る1頭。

そんな個性豊かなのいちのナマケモノたちですが、担当の私にとって永遠のテーマは、「来園者に如何にナマケモノの展示場で足を止めてもらうか」、これに尽きます。これを読んで下さっている皆さんはかなりの動物好き(というよりオタクに近いでしょうか)なので、動物を一瞥もせずに展示場前を通るということはまずないと思い ますが、一般的に愛らしいレッサーパンダやカワウソ、美しいキリン、ミステリアスなハシビロコウなどの人気動物に比べ、ナマケモノは明らかに素通り率が高いのです。ナマケモノ展示場を素通りする人がよく言う捨てゼリフトップ3は、1位から順に、「怠けちゅう(土佐弁:怠けてる)!」「動かん!顔見えん!」「おらん!」です。「怠けちゅう!」はそりゃそうです、1日20時間も眠るんですから。2つ目も同じ、丸まって寝ることが多いので、顔が見えないのも珍しくないのです。3つ目は…もう見てないですね、これは。確かに足と顔を収納して眠っていると、ただの毛むくじゃらの球体で、ややもすればスズメバチの巣の様相を呈していますが。さすがにたった15.3㎡の遮蔽物も死角もない展示場に「おらん」ことはないはずですよ…とひとしきり悲しんだところで、いつも思うのです。

丸まって寝ているとただの球体。微動だにしないので動物と気づかれないこともしばしば…

これはナマケモノが怠けているせいではない、魅力を伝えきれていない担当の私の問題であると。工夫が足りないのだと。ナマケモノの担当になって1年半、来園者にどうしてもこのユーモラスで興味深い動物の方を向いてもらいたい、そう鼻息荒く進む毎日です。そんな日々を拙文ながら、お伝えしていきます。というわけで、とめどなく書いてしまいましたが、最後に一言。
怠けちゅう?いいえ、怠けず「ナマケモノ中」。

著者プロフィール

隈田夏子(くまた・なつこ)

神奈川県出身
実家で毛や羽のある動物の飼育を禁止されていた反動で、中高では生物部に入部。外国産カブトムシの飼育や、学校敷地内の野生タヌキの調査に夢中になる。
2018年に東京農工大学農学部地域生態システム学科を卒業、高知県立のいち動物公園で勤務を開始。
現在フタユビナマケモノをはじめアカハナグマ、オニオオハシなどを担当。

カテゴリー

カテゴリー一覧

このカテゴリーの他の記事

ページTOPへ

Copyrights © 2010 Doubutu-no-kuni All Rights Reserved.
誌面、Webにおけるあらゆるコンテンツの無断複写・転載を禁じます。