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希少種たちが暮らす自然

2011.5.3

大小160の島々からなる沖縄は、年間平均気温22.7℃の一年中暖かな日が続く、亜熱帯性気候に属する地域です。沖縄県の中心都市である那覇から北へ約70kmほど離れたところに、沖縄本島北部の拠点であり、私たちの動物園がある、名護のまちなみがみえてきます。

琉球王朝時代より、この名護を含む恩納村以北の地域は、「山原(やんばる 」と呼ばれ、自然豊かな環境が、現在にいたるまで多く残されています。最近においては、名護より北に位置する国頭村、大宜味村および東村周辺を、特に限定して「やんばる」と指すことが多くなってきているようです。今回、この美しく自然豊かなやんばるの魅力について、お伝えしていきたいと思います。

やんばるの森

鹿児島県の一部と沖縄県の島々は、九州から台湾までの約1300kmにかけて長く連なる琉球列島を形成しています。地球上の長い歴史の中で、地殻変動にともなう隆起や沈降により、これらの島々は、ある時期中国大陸と長い陸の橋でつながったような地続きの状態となりました。その間、大陸産の多くの生物が琉球列島へ渡ってきたものと考えられています。幾度かの陸続き、分断を経て、弧状に島々が点在する、現在のような列島が形作られました。島という隔絶された生活空間においては、大陸や日本本土との遺伝的な交流も生じることなく、種々の生物はそれぞれ独自の発展、進化を遂げてきました。このことが、島々に多くの固有種、固有亜種を生む要因となりました。

ヒカゲヘゴが生い茂る林道

さて、このやんばる地域には、イタジイを優占種とした常緑広葉樹林が広範囲に自生しており、遠くから眺めると、あたかも深緑色のじゅうたんが、あたり一面に敷き詰められているかのように、海岸近くにまでそのすそ野が伸びています。

実際に森の中へ足を踏み入れてみると、林床にはヒカゲヘゴやクワズイモなどの植物がうっそうと茂る、亜熱帯の景観が広がっていきます。年間降水量が3000mm近くにもなるこの地域の気候は、これら亜熱帯樹林の生育を盛んにしてくれているのです。

樹上にとどまる ヤンバルクイナ

この地域(国頭村、大宜味村および東村の一部)に生息する代表的な鳥類としては、ノグチゲラやヤンバルクイナが挙げられます。ノグチゲラは国の特別天然記念物であり、沖縄県の県鳥にも指定されている一属一種のキツツキの仲間です。またヤンバルクイナは1981年に新種として発見された、ほとんど飛翔能力を持たない鳥です。いずれも、世界中でこのやんばるにしか生息しない、大変貴重な固有種です。ほ乳類では、沖縄本島唯一の大型動物であるリュウキュウイノシシや、現在ほとんど目にすることができない、ケナガネズミやオキナワトゲネズミもひっそりと暮らしています。

果実を好む オリイオオコウモリ

このように、種の多様性に富み、多くの生命を育む、やんばるの自然ですが、近年においては、だんだんと環境が悪化し、彼ら希少種の生活する場所が徐々に失われつつあるのです。

夏鳥 アカショウビン

追伸
沖縄地方は、本土と比べて四季の変化に乏しい地域ではありますが、季節ごとにそれぞれ見渡してみると、さまざまな風景に出会います。春にはやんばるの森のどこかで、ノグチゲラが嘴で樹木を叩く音が響き、イジュの花が咲きほこる梅雨期を過ぎて、夏には色鮮やかなアカショウビンの姿に目を奪われ、秋から冬にかけてはサシバが南へ渡る途中、羽を休めに訪れる、それぞれの季節の主役たちが、私たちを楽しませてくれるのです。

著者プロフィール

伊東 孝(いとう たかし)

福岡県生まれ。大学卒業後より2014年まで、名護自然動植物公園(ネオパークオキナワ)に勤務する。獣医師。

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