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森の鼓動

2013.1.11

やんばるの森には、この場所にしか生息しない、とても貴重なキツツキの仲間が棲んでいます。その鳥が、今回お伝えする、ノグチゲラです。固有種であるノグチゲラは、国の特別天然記念物に指定されており、沖縄県の県鳥にもなっています。

やんばるの固有種 ノグチゲラ

全長は31cm、外見は全体的に黒褐色で、お腹のまわりがほのかに赤味がかり、翼(初列風切羽)に白い斑点があるのが特徴です。またオスは頭頂から後頭にかけて鮮やかな赤色を呈しています。

 

ノグチゲラの発見は、今から百年以上前の1886年、日本を訪れたイギリス人貿易商によって、一羽の標本が母国へ持ち帰られたことに始まります。見慣れないその鳥が、翌年新種として発表されることとなる、「ノグチゲラ」だったのでした。


林道に掲げられた標識

さて、やんばるの林道を歩くと、どこからともなく、ノグチゲラの気配がしてきました。
トントントン-、と嘴で木の幹を叩いてみては、近くの木へ移り、また、トントントン。
どうやら、巣づくりに適した樹木を探しているようです。ノグチゲラをはじめ、キツツキの仲間は、足の指が前に2本、後ろに2本の、対趾足となっており、これで、樹幹をがっちりとつかむことができます。営巣木は樹齢数十年に達するイタジイなどの枯木や半枯木を選び、地上5~6m程の高さのところに、巣口の直径 約10cm、深さ 約50cm程の巣穴を作ります。


戦後から近年にかけて、やんばるの森ではダム建設、農地改良、資材用樹木の伐採、畜産用地への整備などによって、生息地環境の悪化が進んでしまいました。さらに最近では、天敵であるカラスをはじめ、マングースやノネコによる影響も指摘されています。生息数は、推定百羽から数百羽程度とされており、こうした生息環境のなかで、今後も安定して種を維持していくには、いまだ危機的な状況が続いています。

ノグチゲラの生活環をみてみると、毎年冬から春にかけては、つがい形成、産卵、ふ化、子育てと、忙しい時期を迎えます。普段、彼らは昆虫やクモなどの動物質、タブノキ、アカメガシワ、キイチゴ類の果実などの植物質を食物にしており、特にこの繁殖時期には、時として近くでカメラを向けても気づかないくらい、一生懸命になって餌を探していることもあります。

通常、キツツキ類は木枝や幹にいる昆虫類を餌としており、ノグチゲラのように土の中にいる昆虫類をも餌とする行動はみられないようです。ノグチゲラは、この場所で生きていくための生活様式として、このような習性を代々身に付けていったのでしょうか。しかしながら、この地表に降りて餌を探す行動が、また、同時にマングースやノネコといった、地上に潜む肉食動物にとっては、とても都合の良い状況となってしまうことを、ノグチゲラ自身は、まだ知らないのかもしれません。

ノグチゲラの主食の一つ(イヌビワ)

追伸
かつて、自分が生まれ育った巣穴の感触を、いつまでも覚えているかのように、ひっそりと、ただ、ひたすらに、樹幹に穴を掘り続けるノグチゲラの姿が、少し切なく思えてきます。一心に木の幹を打ちつける、この乾いた音が、現在も、そして世代を経ても、響きわたっていくような、深い深い森にしていきたいと思うのです。

著者プロフィール

伊東 孝(いとう たかし)

福岡県生まれ。大学卒業後より2014年まで、名護自然動植物公園(ネオパークオキナワ)に勤務する。獣医師。

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