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招かれざるもの

2012.7.3

さて、今回は、前回に引き続きまして、ヤンバルクイナをとりまく問題について、お伝えしていきたいと思います。

みなさんは、外来種、移入種という言葉、耳にしたことがありますか。
そもそもその地域にいる生物種(在来種といいます)ではない種類の生き物のことを指します。たとえば、国内では、アライグマやカミツキガメなど、もともと生息分布していなかった種類の生き物が棲みつき、在来の動物を捕食したり、その生息環境を奪うなどして生態系が崩れてしまうことが、近年大きな問題となっています。そして、同じように外来種をめぐる心配なことが、ここ沖縄やんばるでも起こっているのです。

海外から持ち込まれ、定着することとなった 外来種 ジャワマングース

小型のほ乳類であるジャワマングースは、中東から東南アジアにかけて生息する雑食性の生き物です。1910年に海外から持ち込まれ、沖縄本島南部の野外に放されました。
その当時、サトウキビ畑を荒らすノネズミや、人間に咬傷被害をおよぼすハブの存在に、沖縄県民は大変苦慮していました。
マングースを導入すれば、これら人々の生活に危害を加える生き物を、捕食してくれると考えたからです。

しかしながら、マングースは主として日中活動する昼行性動物であり、とりわけ夜間に動きが活発になるハブとは、活動時間が重複せず、実際にマングースの消化管内容物を調査した研究では、昆虫やトカゲ等を主に食しており、ハブの捕食が確認されたのはわずか0.26%(琉球大学)であったとの結果が出ています。

繁殖力の高いマングースは、次第にその生息域を広げていき、1990年前後には、やんばる地域に侵入していったものとみられています。当初沖縄本島に放たれた17頭あまりのマングースは、100年の時を経た今、推定30,000頭にまで、その数を増やしてきています。

また、やんばるの森では、これらマングースだけでなく、もともとペットとして飼われたものの、捨てられて野生化したノイヌやノネコの存在も、ヤンバルクイナにとって、大きな脅威となっています。大型のほ乳類が生息しない沖縄にあって、彼らは、容易に高次捕食者となり、陸生生物のほとんどを餌として捕獲してしまう存在となってしまうのです。

道路沿いに脈々と続く マングース北上防止柵(沖縄県)

林床に配置された マングースの捕獲トラップ(環境省)


近年では、環境省および沖縄県などの行政機関により、マングース用トラップでの捕獲事業や、マングース北上防止柵の設置など、マングースの生息分布拡大を抑える対策が講じられています。また、ノネコの増加を防ぐ目的として、国頭村、大宜味村および東村では、2005年から飼い猫にマイクロチップを埋込むことを義務化した条例を制定しています。 これらの地道な取り組みにより、この森がヤンバルクイナにとって、安心して棲むことのできる場所となっていくことを願っています。

 

 

追伸
もともと生息していなかったマングースが、この沖縄本島に放たれた時、それは、長らく続いてきたこの島の生態系の歯車が、静かに、狂い始めていく瞬間でもありました。 この歯車を、もとにもどすために、私たち人間は、あとどのくらいの努力が必要なので しょうか。

著者プロフィール

伊東 孝(いとう たかし)

福岡県生まれ。大学卒業後より2014年まで、名護自然動植物公園(ネオパークオキナワ)に勤務する。獣医師。

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