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Vol.23 ありがとう、そしてさようなら爬虫類館

2025.1.7

 昨年11月4日、当園の爬虫類館が46年の歴史に幕を下ろしました。八木山動物公園が開園して約13年後の1978年、当時としては珍しいコンクリート打ちっぱなしのおしゃれな内観に、国内外のヘビ、カメ、ワニ、トカゲといった爬虫類を集約した展示を行い、開館当初は館内に入るために長蛇の列ができるほど多くの来園者で賑わっていたそうです。爬虫類館に併設するゴリラ舎では、ドン(オス)とローラ(メス)が飼育されており、日本でゴリラが見られる最北端の施設でもありました。
 また、2011年3月11日に発生した東日本大震災では、爬虫類館自体の破損はありませんでしたが、館内の暖房設備の燃料入手が難しく温度の設定を下げたり、館内で飼育する動物たちを一部屋に集めて灯油ストーブで暖を取ったりするなど、危機的状況に見舞われました。燃料が確保できるまでの約10日間、なんとかこの苦難の時期を乗り越え、爬虫類館では震災を原因として死亡する爬虫類は1匹もいませんでした。

赤いレンガの外装が特徴的な爬虫類館 2024年撮影

オープン当時の爬虫類館外観 1978年撮影

爬虫類館に併設したゴリラ展示場

震災当時、暖を取るために一室に集められた爬虫類

 


 しかし、近年では施設の老朽化が著しく、雨が降れば雨漏りにより館内のいたるところで水たまりが発生し、爬虫類館の温度管理の要であるボイラーも不具合が増えてきていました。そんな折、八木山動物公園全体の再整備事業をすすめるにあたり爬虫類館は解体し、爬虫類は集約して展示するのではなく、今後順次出来上がる新エリアにて生息地ごとに展示していく計画が決定しました。
 再整備計画に基づき、爬虫類館で飼育している動物の一部は現在飼育している個体を最後にして以後、導入繁殖を中止したり、他園館に引き取っていただいたりしました。そして再整備後に展示予定の動物たちは、それぞれのエリア完成までバックヤード施設で飼育していくことになりました。
 老朽化に悩まされていたとはいえ、長い年月の間に積み重なってきた爬虫類館への愛着は飼育スタッフだけではなく、来園者の方々も同じだったようで閉館の年には多様なイベントを実施しましたが、いずれも多くの来園者にお越しいただき「寂しいね」との声も多くいただきました。

爬虫類館の壁に想い出を描くイベント

ベテランスタッフによる爬虫類館の想い出ガイド


 一方、飼育スタッフの方は寂しがっているわけにもいかず、新しいバックヤードの飼育施設が出来ると慌ただしく引っ越しの準備です。一番頭を悩ませたのが、黄色の暴君ともいわれるキイロアナコンダです。爬虫類館の展示エリアは比較的広かったので1mを超す2匹がいても動きを見ながら飼育管理できていましたが、ガラスの飼育用水槽だと距離が今までよりも近い。いえ、近すぎる。今後は、今まで以上に動物もスタッフも安全に飼育が出来るよう気を引き締めていきたいと思います。
 リニューアルして再び皆様にお目見えする際にはより動物たちの魅力を感じてもらえるような施設になるよう構想しておりますので、ぜひその日まで楽しみにお待ちください。私たち飼育スタッフも、非展示エリアにて動物たちの健康維持に全力で努めて参りたいと思います。元気に、そしてもしかしたら一回り大きくなってまたお会いできる日まで、さようなら!

著者プロフィール

遠藤 優里

1989年東京都出身。
2013年から仙台市八木山動物公園で勤務。
現在は、爬虫類・シマウマ・飼料担当をして2年目。

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