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Vol.28 メアリー 長寿の工夫

2026.2.1

皆さんこんにちは。
当園のアフリカゾウのメアリーは、今年で推定60才になりました。国内で飼育されているアフリカゾウとしては最高齢です。今回は、普段飼育していく上で、私たちが取り組んでいるメアリーの体と心のケアについて紹介します。

■体のケア
体のケアでは、足と歯について重点的に取り組んでいます。
●足について
ゾウの巨大な体を支えているのは、4本の太い柱のような足です。メアリーは4トン近い体重があり、そのすべての重さを足で支えています。高齢になると、筋肉や関節が弱って立ち続けることが難しくなるため、足のケアが必要です。
メアリーはときどき足の関節がうまく曲がらずに歩く様子が見られます。このため、グルコサミン等が入ったサプリメントを毎日与え、さらに定期的に関節内の環境を改善する薬を注射しています。
サプリメントはそのままでは食べてくれないので、バナナに混ぜて与えています。これはメアリーの好物で、喜んで食べてくれます。
注射を行うには事前の練習が必要です。注射部位を、実際の針を刺した時に近い刺激(釘などで軽く触れる程度)で慣らし、そのあとにニンジンやリンゴなどご褒美を与えます。これを繰り返すことで、メアリーは注射を落ちついて受け入れられるようになっています。
また、蹄の手入れも大切です。定期的に蹄や足裏のパッドを削り整えることで、足先からの細菌感染を防いでいます。

メアリーの太い足。

メアリー採血のトレーニング

サプリメントを混ぜたバナナ

 

●歯について
ヒトは乳歯から永久歯へと 1回だけ生え変わり、新しい歯が古い歯の下から伸びて入れ替わる仕組みです。これを垂直交換といいます。
一方、ゾウの歯はまったく異なる仕組みで生え変わります。ゾウでは、奥の方から新しい歯がベルトコンベアーのように前方へ押し出されるように移動します。押し出された古い歯は、歯茎から少しずつはみ出し、はみ出した部分が割れて落ちることで徐々に生え変わっていきます。これを水平交換と呼びます。
ゾウの臼歯は 生涯で5回生え変わり、合計6個の臼歯を使います。メアリーについては、年齢から考えると、現在生えている臼歯は生涯で最後の第6臼歯であると判断できます。
以前にも紹介しましたが(前回R5.9月投稿)、メアリーは数珠繋がり状の糞や細長い糞をするようになった時期がありました。通常は1個ずつ丸い形をした糞をするため、メアリーは歯もしくは咀嚼に問題があり、長い草を噛み切ることが難しくなったことが予想されました。そこで、青草や乾草をすべて細断してから与えることにしています。
1日の量は、夏:青草 60kg、冬:乾草 20kgです。機械を使うとはいえ、すべてを細かくするのは重労働ですが、この工夫によってメアリーがより多く食べられるようになり、糞の状態も改善しました。

細断前の青草

細断後の青草

メアリーの口の中

■心のケア
アフリカゾウは、メスのリーダーを中心とした群れで生活し、他の個体とたくさん交流する動物です。しかし、動物園では一緒に過ごせる個体が多くないこともあり、当園では、ゾウだけでなく人との関わりの時間も積極的に増やしています。
健康管理のためのトレーニングでは、号令などを通して飼育員や獣医師とコミュニケーションを取り、ゾウの餌やり体験では、飼育員だけでなく来園者の皆さんもメアリーと交流することができます。
こうした人との関わりの時間を増やす取り組みによって、メアリーは以前よりも落ち着いて、穏やかに過ごす時間が増えました。
これからもメアリーに健康で長生きしてもらえるよう、様々な工夫をしながら飼育管理に努めていきます。

 

著者プロフィール

石澤 駿

2002年生まれ 仙台市出身。
2024年から仙台市八木山動物公園で勤務。
現在は、アフリカゾウ、グラントシマウマ、アビシニアコロブスを担当して1年目。

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