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Vol.9 フタコブラクダの人工採精・授精への取り組み(前編)

2022.9.14

 皆様こんにちは。今回の記事では、フタコブラクダの繁殖に向けて実施した、トレーニングについてのお話をします。

 八木山動物公園では、7才のラッキー(オス)と12才のラフ(メス)の2頭のフタコブラクダを飼育しています。ラクダは毎年12月~翌年2月頃にかけて発情期に入ると言われており、当園でも毎年冬になるとラッキーの行動が荒くなる様子や採食量の減退が度々確認されていました。これまでもビデオ撮影による行動観察や一定期間の隔離を経てラフと対面させるといった工夫を行ってきましたが、2頭の交尾行動は一度も観察されませんでした。そのことから多くの話し合いを重ね、ついに2022年2月、北海道大学および北里大学と連携し、オスからの人工採精とメスへの人工授精を行うことになりました。

 2021年の秋頃から、飼育担当班では安全に人工採精を行うためのハズバンダリートレーニングを開始しました。トレーニングを実施するにあたり、まず始めに展示場内に枠場を設置しました。この枠場は、人の安全を確保しながら採精を行う際のラッキーの待機場所として準備しました。枠場を設置後、早速トレーニングを開始しました。第一段階は枠場の中にラッキーが自分の意志で移動し、採精時に負担なく過ごせるように馴れてもらうことです。枠場を怖いものではないと認識してもらうために少しずつ進めていく予定でしたが、ラッキーは初めて見る枠場を不思議がりながらも短時間で受け入れ、第一段階はすぐにクリアしました。この反応に驚きです。ラッキーの順応性に脱帽した瞬間でした。その後もトレーニングは順調に進み、射精を促すために枠場の外側から陰部を刺激するところまで辿り着きました。当初は手で刺激していたのですが、安全を考慮して棒を使用したところ、少量ですが粘液を採取することができるようになりました。

号令で枠場に移動するラッキー

ビニール袋を取り付けた棒を使用して陰部を刺激する様子

しかし難しいのはここからで、なかなか射精までこぎつけることができませんでした。時々採取できた粘液の中に精子は確認されず、「ラッキーの精液中に精子はあるのか?」「人工採精にまで繋がるのか?」といったさまざまな疑問と不安がよぎるようになりました。そして飼育担当班と獣医班とで検討を重ねた結果、確実な人工採精を行うために本番は麻酔下で行うことになりました。

 獣医班や連携している大学の先生方が最善の採精方法を検討する中、飼育担当班は「事故なく本番を迎え、そして無事に終われるように最善を尽くすこと」を念頭に置きながら日々トレーニングや必要物の準備を進めていきました。当園初のフタコブラクダの人工採精、そして人工授精本番を迎えた日のことについては、次回の記事で報告します。

著者プロフィール

相澤 里(あいざわ さと)

1996年宮城県出身。
2019年から仙台市八木山動物公園で勤務。
現在フタコブラクダの担当4年目。

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