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Vol.10 フタコブラクダの人工採精・授精への取り組み(後編)

2022.11.20

 皆様こんにちは。今回のよもやま話はフタコブラクダの人工採精・授精への取り組み(後編)です。前回の記事では、フタコブラクダの人工採精・授精を麻酔下で行うことが決定し、本番を迎えるまでの間に飼育担当班が取り組んだトレーニングについてのお話をしました。 今回は北海道大学および北里大学の協力のもと実施した、当園初の試みであるオスからの精液採取とメスへの移植について報告します。

 ついに迎えた本番の日、2022年2月21日は朝から大雪の降るとても寒い日でした。寝室内の暖をとるためのストーブやラクダが負担のかかる姿勢で不動化した場合にからだを動かすためのハンドウインチ(チルホール)、腹帯、頭部を支えるためのわら束など、準備物は万全に整えました。予定では麻酔下のラッキー(オス)から採精を行った後、鎮静下のラフ(メス)に精液を注入するという流れでした。ラッキーに麻酔をかけるところからがスタートなのですが、現場職員の緊張感を察したのか、ラッキーはいつもの号令を聞かずにそわそわしていました。ラッキーが落ち着いてから再度号令をかけ麻酔薬を注射すると、すぐに麻酔が効いたため、頭部の保持のため寝室に稲わらを積み上げました。ラッキーの姿勢を整えてからは、北海道大学と北里大学の先生方の手を借りて作業は順調に進みました。その間、担当飼育員はラッキーの呼吸の確認や処置時のローピングなど、獣医師や大学の先生方の作業のサポートを行いました。

麻酔下で処置中のラッキー

 ラッキーからの採精を終え、次はラフへの移植です。人工授精は鎮静下の立位の姿勢で行われました。おとなしく順調かと思われたその時、ラフが急に寝室内を駆け回るように走り出しました。獣医師がすぐに鎮静剤を追加投与し、再び落ち着きを取り戻したことで事故無く無事に全ての過程が終了しました。一見大丈夫そうに見えていても、気を緩めてはいけないと現場にいた全員が改めて感じた瞬間でした。

鎮静化で処置中のラフ

 あとは当園待望の妊娠を祈るばかりでしたが、残念ながら今回は妊娠には至りませんでした。
 現在は、ラフがエコー検査時に安全な姿勢を保ち続けることができるようなトレーニングに力を入れており、諦めずに今シーズンも繁殖に向けて取り組んでいます。次こそは、待望の子どもに会えることを願っています。

著者プロフィール

相澤 里(あいざわ さと)

1996年宮城県出身。
2019年から仙台市八木山動物公園で勤務。
現在フタコブラクダの担当4年目。

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