日本全国の動物園と水族館をつなぐ情報誌、「どうぶつのくに」「どうぶつえんとすいぞくかん」公式Webサイト

どうぶつのくに どうぶつえんとすいぞくかん

Vol.5 オオカミのペア誕生なるか?

2018.10.22

手前が「アオイ」、奥が「ヌプリ」(写真提供:旭川市旭山動物園)

 毎年今年の気候はおかしいと感じていますが、と言うことはどんどんおかしくなり続けていると言うことになります。感覚的なことなのかもしれませんが、今年は全国的に明らかに異常な気象状況が続いていますね。7月の大雨では旭山の麓の倉沼川に架かる橋が通行止めになりました。開園以来初めてのできごとでした。もはや想定外という言葉は死語になるのかもしれません。
 夏に向かって今年もレッサーパンダが誕生し、あとはキングペンギンがどうなるかですが繁殖についてはひとまず一段落でしょうか。気づきにくいですがクマタカの雛も成長していて、順調にいけばこの手紙の頃にはもう巣立っているはずです。秋からは交尾行動を確認できているアミメキリンそしてカバの状態を慎重に観察していくことになります。
 繁殖と言えば来年に向けての話になりますがシンリンオオカミ。ケンとマース?いえいえ違います。ヌプリとアオイです。ヌプリは旭山動物園生まれのオス(7歳)です。ケンとマースファミリーの中で姉妹と共に生活をしていましたが、自己主張が強くなり始め父親ケンとの同居の限界が近いと判断して2年前に群れから離して非公開エリアでの飼育としました。群れを出るという点ではオオカミの習性を考えると自然な成り行きでもありました。搬出先を探してきましたが声が掛かりませんでした。
 アオイは東山動物園から今年6月に来園しました。メスの10歳です。アオイは海外からの輸入個体で、東山動物園では何回かペアの形成を試みましたがうまくいかずに単独で生活をしていました。繁殖の可能性は高くはない年齢で、可能性があるのは後2シーズンあるかないかです。
 ではなぜあえてヌプリ・アオイでペア形成・繁殖を目指すのかというと、血統です。日本で繁殖しているシンリンオオカミは旭山系統と富山系統の2系統しかいないのです。ですから次の世代までは考えられるのですが、3代目は血縁が非常に近い近親交配となってしまいます。オオカミなどの肉食動物は近親交配による遺伝的な弊害が出やすいため、近親交配は極力避けなければいけません。アオイはどちらの系統でもありません。理想はオスも新たに海外から導入することなのですが、現状でできうる最善策として今回のアオイ導入となりました。
アオイは気むずかしい個体と聞いていましたが、群れでの生活が長く様々な経験を積み穏やかな性格の(親バカかな?)ヌプリとのお見合い、同居は順調に経過しています。
非公開エリアでの飼育となりますが、経過は折に触れ報告していきますので、皆さんも気に留めておいてくださいね。

※【追記  広報あさひばしの「動物園の手紙」をもとに作成しています】

著者プロフィール

坂東 元 (ばんどう・げん)

1964年2月25日、旭川生まれ。
旭山動物園第9代園長。
84年酪農学園大学獣医学部獣医学科卒業後、86年に獣医として旭山動物園に入園。
飼育展示係長を経て、2004年副園長となり、2009年から現職。

カテゴリー

カテゴリー一覧

このカテゴリーの他の記事

ページTOPへ

Copyrights © 2010 Doubutu-no-kuni All Rights Reserved.
誌面、Webにおけるあらゆるコンテンツの無断複写・転載を禁じます。