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Vol.6 特異な生き物、マヌルネコ

2018.10.26

マヌルネコ「グルーシャ」(写真提供:旭川市旭山動物園)

 お盆も過ぎ、すっかり秋の気配です。それにしても今年のお盆に重なる夜の動物園期間中は「ここまで降るか!」というくらい雨にたたられました。特に15日16日は最悪でした。この期間に向けて多くの準備を重ねて、せっかくだから多くの方に感動を届けたいと張り切っていたのですが、天気だけはどうしようもありません。
 さてこの夏新たにマヌルネコとライオンが来園しました。マヌルネコはウンピョウが死亡し施設が空いたことに伴う来園でした。マヌルネコは皆さんおなじみの飼い猫と同じくらい小型のネコですが、寒い環境に適応したネコで特に冬毛はさらにモフモフになるようです。それにしても体型や動きを観察していると飼い猫を含め小型のネコとは多くの微妙な違いがあります。でもそれがすべてヒトが可愛らしいと感じること線に触れています。いわゆるブサカワですね。
 まずは耳と目の位置。耳は極端に頭の両脇に有って、耳のラインと頭のモフモフとが水平につながって見えます。さらに目の位置がおでこ寄りの位置にあります。棚の上から身を潜め目より上だけを出してこちらを見下ろしていることがあるのですが、あの水平なラインが、生きものとしての存在の気配を消しているように感じます。アッあそこにいる!という丸みがないのです。水平基調の岩だなにいたら見つけることは難しそうです。そして目から上の面積が少ない…。本来の獲物はナキウサギなどの小型のほ乳類なのですが背丈のある草の少ない岩肌の露出した生息環境が目に浮かんできます。
 次に瞳孔(黒目)が丸いこと。これも何となく違和感を覚えた点です。小型のネコの仲間は瞳孔が収縮すると瞳孔が縦状のいわゆる猫目になります。黒目が丸いネコ。耳の位置や丸い黒目からギズモっぽい印象を受けました。これも草藪に身を潜めて縦の隙間から覗いて獲物を襲う一般的な小型ネコとは異なる環境での生活をイメージさせます。
 さらに短い手足と鼻筋の短い平面的な顔がヒトが可愛いと感じる法則にはまっています。
 すべてが相まって、地面に伏せている姿はやはり生きものを感じさせず、枯れ草の茂みみたいに見えます。
 僕も始めて本物を見たのですが、これは何とも特異な生きものですね。
 ただ来園してからマヌルネコに関しての問い合わせが多く、ネコ好きの方には人気のある種なようです。園内で「ネコはどこですか?」と聞かれ「こども牧場に天売島の馴化ネコいますよ」と答えたら「違う、こないだ来ネコは!」、ネコじゃないけど…と思いながら「マヌルネコはあっちです」。
 おっとライオンのこと書けませんでした。また来月にでも。

著者プロフィール

坂東 元 (ばんどう・げん)

1964年2月25日、旭川生まれ。
旭山動物園第9代園長。
84年酪農学園大学獣医学部獣医学科卒業後、86年に獣医として旭山動物園に入園。
飼育展示係長を経て、2004年副園長となり、2009年から現職。

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