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Vol.11 DNA研究と、生物進化の考え方

2019.8.30

夜間開園昨年の様子(写真提供:旭川市旭山動物園)

今年は昨年と打って変わって雨が降りません。園内を見渡すと芝生の緑がどんどん薄茶色に変わっています。川の水位もアレッというくらい下がっています。今年は今年でどんな夏になるのか心配になります。

 話は変わりますが最近目が離せない関心事があります。人のDNAに関わる研究が急速に進んで物事に対する感性や、感情の働き方、メタボや筋肉質などの体質もDNAの特定の部位の働きのスイッチのオンオフの組み合わせでコントロールされていることが分かってきました。さらにそのDNAのスイッチの状態がすべてではないにしろ精子にも反映されていて、親から子に遺伝している可能性が高いこともわかり始めています。これはある意味親が獲得した形質が遺伝することを示しているわけで、生物の進化の考え方を根底から変える可能性があります。今までは、パソコンで例えるならば使い込んで様々なことを学習したパソコンを親だとするとそのパソコンをリセットして初期状態に戻したものが子ということになります。リセットする時に生じる小さなエラーが突然変異でその変異が進化の原動力だと考えられてきました。しかし獲得した形質が子にも遺伝する可能性が見えてきたことで、子供を作る計画を立てているメタボの男性がメタボスイッチをオフにしようと筋トレしていたり、マラソンをして記憶力アップのスイッチをオンにしようとしているテレビ番組が流れていました。

 自分が動物園に就職した30数年前、野生捕獲個体やその2世といった個体が多くいました。当時の方が明らかに人との距離感に神経質だったり許容範囲がとても限定されている、いわゆる飼育管理が難しい個体が多かったように思います。飼育下で継代する中で学習により人に対する反応が穏やかになってきていると理解してきたのですが、実はもっと積極的に遺伝的に飼育下環境に適応しつつあるのかもしれません。まだ具体的に見えてこないのですが動物園の新たな可能性をすごく感じています。

 さて最後に、この手紙が届く頃はもう秋の気配ですね。9月15日に親子3世代で動物園を楽しんで頂こうと夜間無料開放を予定しています。旭山動物園は今年で開園52年、祖父母の初デートが実は動物園だったなんてこともあるかもしれません。きっと動物園を介してたくさんの話題を共有できると思います。ぜひ誘い合って参加していただければと思います。

 

著者プロフィール

坂東 元 (ばんどう・げん)

1964年2月25日、旭川生まれ。
旭山動物園第9代園長。
84年酪農学園大学獣医学部獣医学科卒業後、86年に獣医として旭山動物園に入園。
飼育展示係長を経て、2004年副園長となり、2009年から現職。

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