日本全国の動物園と水族館をつなぐ情報誌、「どうぶつのくに」「どうぶつえんとすいぞくかん」公式Webサイト

どうぶつのくに どうぶつえんとすいぞくかん

Vol.7 ゾウの歩む道

2013.2.3

2013年元旦、東京都井の頭自然文化園で飼育されているアジアゾウの「はな子」が66歳のお誕生日を迎えました(正確な月日がわからないので、1月1日を誕生日としているそうです)。はな子はこれまで2008年に65歳で死亡した神戸市王子動物園の「諏訪子」の記録と並ぶ日本最高齢のゾウでしたが、この元旦で最高齢の新記録を更新しました・・・。 

 

 

さて、先般到津の森公園の岩野園長がコラムの中で国内のゾウの飼育状況についてお話しをされていました。日本動物園水族館協会主催のゾウ会議では以前から繁殖や新規個体の導入をしないと50年後には日本の動物園からゾウがいなくなってしまうことをシュミレーションし警鐘を唱えてきました。しかし、なかなか原産国からの輸入は難しくアフリカゾウでは2001年にマルミミゾウが輸入されて以来、新規個体の導入は実現していません。サバンナゾウになると1994年が最後の導入になります。しかし、近年アジアゾウでは宮崎や沖縄でのタイからの導入に続いて、スリランカからの導入や新規導入計画などが行われています。

しかし、日本の動物園での飼育や繁殖状況を考慮したときに手放しにて原産国からの新規導入や飼育を推奨することが良いのか考えてしまいます。現在、国内での飼育状況は単性飼育や番飼育が中心でありゾウの社会構成などを考慮した時、新規の導入計画において多頭数での飼育展示などを考慮している園館はいくつあるのだろうか?

 

 

近年、動物園では種の保存を目的とし繁殖計画のもと動物たちの移動が盛んになっています。主なものとして、東京の上野動物園ではゴリラが集められ千葉市動物公園からやってきたモモ(29歳)の3度目の妊娠が確認されています。またホッキョクグマでは札幌市円山動物園において豊橋市動植物園から受け入れたキャンディ(20歳)が妊娠出産まで確認され、男鹿水族館ではクルミ(15歳)の繁殖に成功しています。ゾウに関してもブリーディングローンにて多摩動物公園でアフリカゾウや豊橋動植物公園にてアジアゾウの繁殖に成功しています。このように、繁殖実績のある個体や動物園に移送し繁殖を試みる・・・ズーストックや専門性のある動物園の必要性が求められている時期ではないかと感じます。

 

 

そして、この原稿を書いている20日に当園のアジアゾウ太郎39歳が倒れ起立不能になりました。同日から担当者や獣医師などが泊まり込み24時間体制にて補液など昼夜問わず治療を続けましたが看護の甲斐もなく私たちの願いも届かず死亡してしまいました。大型動物のゾウは基本的に長命であり60歳以上生きるといわれていますが飼育下のゾウたちは野生のゾウに比べ短命に終わっているケースが多いようです。野生のゾウたちに比べ極端に少ない運動量。限られたスペースでの飼育管理や質の高い飼料などは少なからず肥満にもつながります。また、繁殖目的や様々な理由により動物園間を移送されることで起こる親子の分離や仲間との別れなどが高い社会性を持つゾウにとって多くのストレスになっているようです。また、以前から報告されている発情停止や肥満、四肢の疾患。そして新生児への攻撃や結核、ヘルペスなどの諸問題も指摘されています。このような状況下、ゾウや動物を飼育管理する動物園の方向性や動物園を楽しむ市民の皆さんがゾウの将来についてどのように感じられ、これからゾウと一緒に歩むべき道を一緒に考えていただければ幸いです。

著者プロフィール

椎名修(しいな・おさむ)

1962年3月群馬県出身。
『ばくの動物園日記』に登場する西山登志男さんにあこがれる。
群馬県サファリパーク、姫路セントラルパークにてアフリカゾウの飼育を経験をへて愛媛県とべ動物園に勤務。
ソロモンの指環を求めて現在に至る。

カテゴリー

カテゴリー一覧

このカテゴリーの他の記事

ページTOPへ

Copyrights © 2010 Doubutu-no-kuni All Rights Reserved.
誌面、Webにおけるあらゆるコンテンツの無断複写・転載を禁じます。