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どうぶつのくに どうぶつえんとすいぞくかん

Vol.8 妊婦さん

2013.4.8

当園のアフリカゾウのリカさんは現在妊娠中です。2011年8月にペアリングを実施し交尾に成功しました。ゾウの発情周期は15~16週と言われていますが、当園のリカは16.2週程で発情回帰します。今回も発情回帰が認められないことや血中プロゲステロンの高値を維持し続けているため妊娠を確定しました。

 

 

経産の個体で自然保育にも成功しておりますので、ある程度安心しながら経過を見守っています。ゾウの妊娠期間は649±14日とも言われていますので交尾から換算し分娩は5月を見込んでいます。

ゾウの繁殖を目指すためには何を観察モニターし、どのようなサポートが必要になるのでしょうか?

 

 

以前にもLH値のモニターにより排卵を調べることをお知らせしましたが、まずは発情周期の特定が必要になります。そのためには採血に馴らすことは大変重要で少なくとも毎週の採血による黄体ホルモンの動態を把握することがひつようです。最近では尿中のホルモンの測定により発情時期を追うことも可能となりましたが、血液のサンプリング検査により健康管理のための様々な情報を得ることができるので採血に馴らすことはとても大切なこと言えるでしょう。

 

 

妊娠の確認は、交尾後にプロゲステロンが上昇すれば妊娠の可能性が高いと言えます。プロゲステロン値を継続的にモニターすることにより判断ができますので、散発的な検査ではあまり信用性が得られないかもしれません。一般的に16週間高い値を示していれば妊娠の可能性が高いと言われます。そして妊娠初期では直腸から、妊娠後期では腹部からの超音波検診によりその状況を把握することも可能となります。

 

 

妊娠末期でのモニタリングを行うためには、どのようなことにに注意して取り組むべきでしょうか?様々なサインはゾウ自身が醸しだす行動などの変化に現れますので見逃すことなく観察することが必要になります。血液のサンプルから分娩時期を特定することも可能になります。630日ころから毎日モニターすることによりプロゲステロン値の降下を把握し、その値より分娩時期が把握できます。当園では妊娠85週から週に2回採血を実施し、90週より毎日採血を行う予定です。

粘液

行動的な変化とし尻尾で陰部をたたいたり、糞塊が小さくなったり、頻尿が観察されたりします。姫路セントラルパークや王子動物園でも報告されていますが、当園でも腹部から陰部に浮腫が観察されています。また、乳腺発達や乳汁の分泌も分娩前から観察され、今回では分娩前から搾乳を実施し、乳成分の変化をモニターしています。分娩後哺乳時期により変化する母乳をモニターすることにより、人工哺育になった際の調乳の指針が得られたらと思っています。そして分娩間際には「いきみ」後肢を休ませたり粘液の漏出が多くなったりと分娩前には明らかな行動変化も観察されます。

右乳房乳滴

腹部浮腫と乳房


このようにさまざまなサインや科学的モニターを実施することにより安全にゾウの分娩に立ち会うことができます。今回の分娩についてもまた良い報告ができるようにサポートしていきたいと思います。

著者プロフィール

椎名修(しいな・おさむ)

1962年3月群馬県出身。
『ばくの動物園日記』に登場する西山登志男さんにあこがれる。
群馬県サファリパーク、姫路セントラルパークにてアフリカゾウの飼育を経験をへて愛媛県とべ動物園に勤務。
ソロモンの指環を求めて現在に至る。

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