日本全国の動物園と水族館をつなぐ情報誌、「どうぶつのくに」「どうぶつえんとすいぞくかん」公式Webサイト

どうぶつのくに どうぶつえんとすいぞくかん

ノドジロクロミズナキドリ

2011.8.11

 

突然ですが、私、酒井は小心者です。どれくらい小心者かと言えば、南極派遣の募集を見て、行きたいけど不安で悩んで、悩んで、悩んで…。応募を決意したら次の年の募集が始まっていたっていう位、小心者です。だって、南極の昭和基地には1年に1回しか、砕氷船「しらせ」は行かないのです。不安になるじゃないですか。

「しらせ」の航海は東京から11月中旬に始まります。オーストラリアの西の港フリーマントルに寄港してもらって、そこで空路でやってきた南極観測隊が合流します。そこから1ヶ月の船旅を続け12月末にいよいよ昭和基地に到着するのです。長旅です。

そして2月の中旬に昭和基地を離れ、3月に私は東京に戻ってきました。でも一緒に行った内の30名の人は船に乗りませんでした。越冬隊といいます。今も南極で仕事をしているのです。53次隊のお迎えを待ちながら。とても大切な仕事です。

さて。1ヶ月の船旅。あなたならどう過ごしますか?ダンスパーティー?そんなのありませんよ、豪華客船じゃないんだから。訓練や勉強会、打ち合わせなど大忙しです。航路中の海の研究もあります(この重要性については今度、お話ししますね)。トレーニングをするのも大切な日課。

私達を南極につれていってくれる頼もしい味方は179名の海上自衛官。彼らは食事も作ってくれました。金曜日はカレーの日と決まっています。航海が長くなると「今日は何曜日だっけ?」「昨日カレーだったから土曜だ」なんて会話になります。ずーっと大海原を眺める日々ですから、曜日を忘れちゃうのです。

そう、ぐるり360度の水平線。絶海のただ中にポツンと浮かぶ私たちの船。すっかり陸地は遠くなっているはずなのに、海鳥が船にやってくるのは驚きでした。

小心者の酒井は心配になってしまいました。陸に帰れなくなったらとか、怖くないのかなぁ。そんなことを考えていたら、隣にいた仲間が言いました。

「この広いインド洋を独り占めして、いい気分だろうなぁ。」

うーん、そういう考え方もあったのか。あなたは、どっちの考え方をするタイプですか?

さて、この時にやってきたのはノドジロクロミズナギドリ。聞けばここから2500km離れたケルゲレン諸島で子育てをしているはずだそうです。夫婦交代でこの海域まで飛んできてエサをとるのです。ちょっとお食事にって、北海道知床半島から沖縄本島あたりまで行く感じ。片方の親は1週間以上、巣に残り相手の帰りを待ちながら卵を温めているはずです。

えぇ!1週間!またも小心者の酒井は不安になってしまいます。待つ方も心配じゃないかな。奥さんが帰ってこなかったらどうしよう、とか。

でも、ノドジロクロミズナギドリは1日に800km移動できる鳥です。12時間歩き続けても60kmしか移動できない私たち人間とは違う感覚で旅をしているのかもしれません。帰り道はしんどいなぁとか考えないのかもしれませんね。

よく学校で生徒に言います。
「相手の気持ちになって考えなさい。」
 でも、本当はそれは難しいことなのかもしれません、特に相手が、違う動物だと。時間感覚や距離の感覚はずいぶん違っていそうです。
「動物の気持ち」を理解するにはどうすればよいのでしょうね。
 今度、動物園にいったら色々、想像してみようかな。キリンには何が見えているのだろう。イルカは水から飛び出すとき、どんな気持ちなんだろう?
 でも、ライオンと目があったら、小心者の私はドキドキしてしまうかもしれない。

   

著者プロフィール

酒井誠至(さかい・せいじ)

東京生まれ
趣味 乗馬
 住宅事情によりペットが飼えなかった反動で、野山の生き物好きになりました。専門的な知識はないけれども、星空を眺めたり野山を散歩したりと自然を感じられる生活を送りたいと思っています。
 北の大地に憧れ北海道立高校の理科教員となり、現在は北海道登別明日(あけび)中等教育学校に勤務しています。
 第52次日本南極地域観測隊夏隊(2010年11月出発)に同行し、見てきたことをこのHPでお伝えしたいと思っています。 

カテゴリー

カテゴリー一覧

このカテゴリーの他の記事

ページTOPへ

Copyrights © 2010 Doubutu-no-kuni All Rights Reserved.
誌面、Webにおけるあらゆるコンテンツの無断複写・転載を禁じます。