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南極の研究者

2011.11.16

子供の頃、船乗りシンドバットの冒険の絵本に夢中でした。怪鳥との対決とかダイヤの谷の探検とか、ワクワクしませんでしたか?しかし、私も今はいい大人。子供だった自分 に会ったとしたらこういうでしょう。「船酔いはつらいぞ。しかも、もう世界中、探検は 終わっちゃっているし。」

吹雪の夜間でも、航行は続きます

第1次隊が作った基地の建物。記念として残されています。当   時の苦労がしのばれます。

18世紀に生まれたら良かった。

その頃はまだ誰も南極大陸を見たことすらなかったので す。南に進むにつれその海域は「吠える40 度、狂う50度、叫ぶ60度」と呼ばれる通 り荒々しさを増す、誰も寄せ付けない魔の海域 に変容するからです。

でも、その乱雲の彼方か ら淡水でできた氷が流れ来ることから、そこ に陸地があることはわかっていました。そこで船乗りたちの果敢な挑戦が繰り広げられて いたのでした。

私もそういう大冒険をしてみたかった。ただし、船酔いしない程度の荒海 で。

 

 

そんな海の向こう、南極大陸にわざわざ行こうっていうのですから、観測隊の人たちっ てどんな人たちなんだろう?何をしにいって いるんだろう。

今回は観測隊員によって進められる研究の一部を紹介しますね。

 

 

写真は石を集める人たち。地質学者です。

キャンプ地にヘリで迎えに行った時、寝泊ま りする道具より遥かに膨大なサンプルの石 (手前に集積された荷物)に驚かされまし た。

氷さえ解けてしまえば、土が存在しない 大地ですから、岩石の収集に南極はうってつけなのです。

で、どうするの?と聞いたとこ ろ、「地球の歴史を調べます。南極のこの地 域とインドはくっついていたんですよ。そんな 過去を調べて未来の地球を予測するのが仕事です。 地質学は天気予報と同じです。将来は アジア大陸と南米大陸は近づくでしょう。数億年先の予報ですけどね。」ですって。大陸 は関係し合っているから、南極の研究が世界の未来予測につながるのです。

PANSYレーダー。これで大気の様子を探ります。

アンテナを1045本も立てる工事をする人 たちもいます。テレビ局じゃないです。気象 の研究者です。PANSYレーダーといって、昭 和基地の最近の目玉プロジェクトの一つ。

上 空500kmまでの大気の動きを調べられるそう です。スペースシャトルが300kmの上空です から、500kmの先なんてほとんど空気もないでしょうに。

まあ、そこまでやったら天気 予報の精度も上がるんでしょうねって聞いたら、「いや、直接には無関係です。」とのこ と。

「地球規模の気象モデルを作るのに使いますよ。」そんなの日本でスーパーコンピュ ターで計算すればいいのに。

「計算させる 元のデータが十分でないから、まだ完全 じゃないんです。地球で最も暑い所と寒い 所は、特に環境に及ぼす影響が大きいので 正確なデータが必要なのです。」

飛ばした風船の下には気温や風速を測定する装置が吊るされて います

そうか、 赤道は行きやすいので研究が進んでいるけ ど、南極はこれから本格的な研究が進むの ですね。「しかも南極は環境の変化が特に 敏感に現れる所なのです。例えば、フロン ガスの影響。

オゾンホールが一番にできた のは南極でしたよね。でも、これだって解 明はこれからです。」  コンピュータのシミュレーションで世の 中はもう、すべてお見通しだと思っていま した。でも、まだまだ地道な観測は大切な のです。探検すべき未知の世界はまだまだ 残っていそうです。少年の夢の舞台は不滅 なのでした。

南極ならではの研究もあります。例えば 南極に天文台を作ろうという計画。 そんなの日本で作れば楽なのに。そう思っていましたら、「南極の冬は24時間、夜。だから星が見放題でしょ。」あ、そうか。これからは 天文学者も南極を目指す時代なのかもしれませんね。

まだまだ、面白い研究が行われていました。もちろん生物の研究も盛んでしたよ。ペンギンの調査から地球環境の思わぬ変化が浮 かび上がったりしていて。でも、このお話 は別の機会にしますね。

さて、これ以上は説明しきれないので、 また宿題です。今度は遠足。東京の立川と いう所に南極・北極科学館があります。こ のHPの読者の皆さんならきっと楽しめると 思います。生きたペンギンはいませんけど ね。行ってみてください。  

南極の研究者は、ものすごく特殊な世界 を調べる人だと思っていました。でも、違うのですね、南極を通すと世界がよく見えてく るのです。そう考えると、南極は私たちの日本にも案外、近い場所なのかも知れません。

著者プロフィール

酒井誠至(さかい・せいじ)

東京生まれ
趣味 乗馬
 住宅事情によりペットが飼えなかった反動で、野山の生き物好きになりました。専門的な知識はないけれども、星空を眺めたり野山を散歩したりと自然を感じられる生活を送りたいと思っています。
 北の大地に憧れ北海道立高校の理科教員となり、現在は北海道登別明日(あけび)中等教育学校に勤務しています。
 第52次日本南極地域観測隊夏隊(2010年11月出発)に同行し、見てきたことをこのHPでお伝えしたいと思っています。 

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