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南極の迷子石

2011.10.13

南極の岩山を歩いていると、何の脈絡もなく丸みを帯びた岩がポコンと‘置いて’あります。岩山なんだから、岩があって当たり前でしょ、そう思うかもしれませんが、明らかに周りの岩とは風情が違うのです。誰かに間違って連れて来られたかのようです。だから、「迷子石」と呼ばれています。たくさんあるので作品名をつけてみました。

で、問題は誰がこの迷子を連れてきたかです。私?無理、無理。大きいんですもの。犯人は氷。氷は氷でも動く氷、つまり氷河です。氷河は岩を削りながら動き、削った岩をどんどん運んでいく。そして気候の変化などで氷河が消えた時、残されるのが迷子石という訳です。写真は「白瀬氷河」といいます。1年に3km移動する、世界で最も「流れが急」な氷河の一つです。つまり、1日に8mです。氷のダイナミックな姿を見た思いでした。大陸で生まれ、海まで流れ出た氷河はそこで氷山と呼ばれる様になります。

さて、そんな氷河が流れた跡の谷底を歩いてみましょう。これは意外とラクチン。まるでローマ遺跡のように岩が平坦に敷き詰められています。これも氷河の仕業。何百tという重さで上からギュッと押さえつけた結果です。そして見上げると滑らかな岩肌。氷が岩を削ったというより、磨いたという感じでしょうか。氷河の最前線はどうなっているかというと、土砂がドシャッと積み上げられています。ブルドーザーの様に押してきたんですね。今、土砂と書きました。でも、南極を歩いていて、私は大発見をしました。 「南極大陸には土と呼べるものは見当たらないなあ。」

ここまでの写真を見直してみてください。ね、岩と石ころ、そして砂だらけでしょ。まるで月面です。宇宙では土ではなく、岩と石ころ、それが当たり前なのです。そうだ!地球もできたての頃は岩のかたまりだったはずです。だから、この風景は太古の地球に似ているのかもしれません。

でも、南極大陸を離れ、昭和基地のあるオングル島に行くと泥のようなものはたくさんありました。この違いは何でしょう。

そのヒントもオングル島の岩に隠されていました。蜂の巣岩といいます。穴だらけです。誰の仕業だろう。それは風。強い風が何年も何年も吹き付けるうちに削られていったようです。こういう現象を「風化」といいます。風化の原因は風だけではありません。強烈な寒暖の差、太陽の光、水分などにより、岩は削られ小さくなっていくのです。オングル島は大陸に比べ、氷河が消え去ってから長い年月が経っているので、より風化が進み、泥ができているのかもしれません。岩だらけの大地が変化を繰り返し、緑を育む大地に変化していく。地球ができてから46億年の大地の歴史の一部を私は見ることができたのです。

しかし、こうしてできた泥は土と呼ぶには不十分だ、という科学者もいます。植物がそこで生えて枯れ、動物が暮らして死体となる。そういったものが複雑に混ざり合ってできるものこそが土と呼ぶにふさわしいといいます。

また、風化そのものも、岩の中(表面ではありません)に住む微生物が重要な原因になっているのではないか、というのが最近の研究結果のようです。となると、土は生物が作ったものということでしょうか。ここに私が南極で感銘を受け、皆さんにもお伝えしたいテーマが隠れています。キーワードは「生物は地球のお客様ではない」です。でもこのことは、また今度。

今日は生物と土の関係についての宿題を1つ、出してお話をおしまいにします。がんばってやってくださいね。

宿題「かのダーウィンがミミズを研究して分かったことをまとめよう。」
おまけ宿題 「海に浮かぶ氷山は塩っぱいだろうか。(ヒント3段落目)」
        「迷子石の4つ目の写真にタイトルを付けてください。」

著者プロフィール

酒井誠至(さかい・せいじ)

東京生まれ
趣味 乗馬
 住宅事情によりペットが飼えなかった反動で、野山の生き物好きになりました。専門的な知識はないけれども、星空を眺めたり野山を散歩したりと自然を感じられる生活を送りたいと思っています。
 北の大地に憧れ北海道立高校の理科教員となり、現在は北海道登別明日(あけび)中等教育学校に勤務しています。
 第52次日本南極地域観測隊夏隊(2010年11月出発)に同行し、見てきたことをこのHPでお伝えしたいと思っています。 

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