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緑豊かな南極

2011.9.13

「お弁当に白身魚フライって入っていることあるじゃない?今日の授業は、魚フライと南極のお話です。」 「センセ−、僕はハンバーグの方が好きでーす」 うーん、そういう話じゃないんだよね。まあ、いいか。牛を育てるには牧草がたくさんいるよね。そこで、南極で撮った写真、1枚目。広がる大草原。すごいでしょ。でも実はカラクリがあります。これは南極の海の氷に穴を開け、氷を下から撮影した写真を上下さかさまにしたものです。船から見るとまっ白な氷。でも、その氷の下の面には青々と茂る植物プランクトンの草原が広がっているのです。ビックリです。(正確にいうと、この藻類の仲間は黄褐色をしています。この写真は光の加減で緑色なのかもしれません。)

さて、こんなに植物が育つためには肥料となるものが必要なはず。南極の海にはそんなに肥料があるのでしょうか。 南極海域の海水は-2℃位になると凍り始めます。みなさんはオレンジジュースを凍らせた事がありますか。その時、できた氷を溶かしながら飲もうと思ったら、初めはすごく濃い味がするのに、残った氷には味がなくて、がっかりしたことがあるかもしれませんね。南極の海の氷にも同じ事がおきています。海水は氷になるときに薄味の氷になります。その分、残りの海水はものすごーく濃い塩水になっているのです。冷たくて濃い食塩水は重たいので、海底深く沈んでいきます。その替わりに、海底から上がってくるのが海洋深層水。肥料がたくさん溶け込んでいます。

肥料がたくさんあれば、こっちのもの。なにせ夏の南極は白夜ですからね。24時間、フル稼働で光合成がすすむので、南極の海は植物プランクトンの楽園になるのです。 わーい。楽園だー。おや?喜ぶ君は誰?オキアミです。体長6cm位のエビに似た赤い生き物。植物プランクトンを食べて大増殖します。場所によっては海が赤く見えるほどだそうです。南極の海はオキアミの楽園なのです。

(低い声で読んでください)わーい、楽園だ−。喜ぶ君は誰?クジラですよ。ヒゲクジラの仲間にはこのオキアミを食べるために、はるばる赤道から夏の南極海にやってくる種類もいます。あの巨体がお腹いっぱいになるくらい、オキアミがいるのです。世界中のクジラを集めて体重を計っても、すべてのオキアミの重さにはかなわないといいます。 他にも喜ぶ生物はいます。アデリーペンギン。あんまりオキアミを沢山食べるからウンチまで赤くなります。

魚たちもオキアミを食べてどんどん、増えていきます。銀ムツ(メロ)という魚がスーパーで売られているのを見たことがあるかもしれません。これ、南極海育ちの魚です。南極の海は私たち日本人のお腹も満たしてくれているのです。なんて豊かな海なんでしょう。

では、復習。なんで、こんなに南極の海は豊かなの? そう、突き詰めてみれば南極の寒さ、冷たさが原動力なのでした。 さてさて。沈んでいった冷たい海水はどこへ行ったのでしょう。次々と南極の冷気に冷やされて沈んできますからね。驚くなかれ、この海水は海底をずーっと這うように進み、日本近海までやってきているらしいのです。その旅、2000年間!

ん?冷たい海水が日本の近くに来ている?これは日本にとっては床暖房ならぬ、床冷房?この夏も暑かった私たちには聞き逃せない情報です。実際、この南極を出発点とする、世界規模の海水の流れは地球の気候に大きな影響力を持つようです。だから、海底の水の流れを調べることは地球の将来を考える上で欠かせない作業なのです。でも、海は広いですからね。まだまだ未知の世界なのです。ワクワクするね。 「と、いうことで今日は白身魚フライから地球スケールのお話をしました。南極の凄さがよく判ったでしょ」 今日の授業は力が入りました。でも生徒はニヤリと笑っていいました。 「魚フライをご馳走してくれたらもっと判るかもしれません」。

著者プロフィール

酒井誠至(さかい・せいじ)

東京生まれ
趣味 乗馬
 住宅事情によりペットが飼えなかった反動で、野山の生き物好きになりました。専門的な知識はないけれども、星空を眺めたり野山を散歩したりと自然を感じられる生活を送りたいと思っています。
 北の大地に憧れ北海道立高校の理科教員となり、現在は北海道登別明日(あけび)中等教育学校に勤務しています。
 第52次日本南極地域観測隊夏隊(2010年11月出発)に同行し、見てきたことをこのHPでお伝えしたいと思っています。 

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