日本全国の動物園と水族館をつなぐ情報誌、「どうぶつのくに」「どうぶつえんとすいぞくかん」公式Webサイト

どうぶつのくに どうぶつえんとすいぞくかん

Vol.7 やんちゃ坊主の台頭!?

2015.11.3

最近のゾウのグラウンドでよく見かける光景。

1

春美カムパートの後ろからお尻を押して歩く秋都トンカム。

2

牙で春美カムパートのお尻をひと突き!

3

嫌がる春美カムパートを気にもせず、今度は鼻を背中に乗せながら牙でぐいぐい押します。

春ごろまでは、ひたすら夏美ブンニュンばかり狙ってこのような行動をしていた秋都トンカムでしたが、最近は夏美ブンニュンより春美カムパートの方がよく狙われています。このような行動は、交尾の際にも見られるような行動です。もちろん、秋都トンカムも春美カムパートもまだまだコドモなので、本当に交尾をすることはありませんが、若いころからこのような行動が見られるのは、秋都トンカムがオスとしての能力を十分に備えている証拠とも考えられます。

餌の時間にも、以前は春美カムパートがすごい勢いで頭を振って、秋都トンカムを餌の前から追い払っていましたが、今は立場が完全に逆転。秋都トンカムが、春美カムパートを追い払います。
秋都トンカムの強みは、なんといってもこの牙!

4

秋都トンカムは牙の使い方がとても上手で、これで突かれるとメスたちはたまりません(>_<)

散々牙で突かれている春美カムパートのお尻には、白く跡が残っています。

5

ただ、秋都トンカムの方が春美カムパートよりも完全に強いのかと言われると、まだわかりません。なぜなら、春美カムパートが秋都トンカムに反撃することもあるからです。

6

秋都トンカムが春美カムパートの前方から近づくと…

7

春美カムパートも頭をあげて、正面から秋都トンカムに向かっていきます。外から見えないくらいの彼女の短い牙で秋都トンカムの鼻を押しているのです。

こんな2頭の様子を見て、来園者の、「けんかしてる!大丈夫なんかな?」という声を耳にすることもありますが、今のところ、私たちは見守っています。というのは、まだまだ2頭は子ゾウ。本当に仲が悪くて、本気でけんかをしているわけではありません。並んで餌を食べていることだってあるのです。

野生では、子ゾウの頃は群れの中で周りのゾウとのやりとりを通して、ゾウとしての社会性を身につけていきます。その中で、特にオスゾウは、お互い正面から鼻同士をぶつけ合ったり、一見けんかとも見えるような行動をします。その中で、今の自分の力を知り、将来、繁殖のときに、他のオスと戦うための準備をしているのだと考えられています。

このように徐々に力をつけてきている秋都トンカムですが、まだまだ体は一番小さく、他のメスたちに致命的な怪我を負わせる可能性は低いです。そして、何よりも一番年上の冬美トンクンには歯が立ちません。体重が倍ほどちがうこともあって、今のところ冬美トンクンにちょっかいをかけるところは見られません。
それに、しつこく春美カムパートにつきまとっていると…

8

冬美トンクンが2頭に近づいてきて、間に割って入ります。子ゾウたちの中でも、しっかりとお姉さんの役割を果たしてくれているのです。秋都トンカムも、相変わらず冬美トンクンが近づいてくると、とたんにおとなしくなります。今のところ、冬美トンクンは、逆らってはいけない相手だと思っているようです。
冬美トンクンがいるからこそ、子ゾウたちの関係のバランスがうまくとれているのかもしれません。

体も心も日々変化する、成長期の子ゾウたち。多少のやんちゃには目をつぶるとして、これらも4頭の行動や関係をしっかり見ながら、彼らとつきあっていきたいと思います。

*本稿では、京都信用金庫および洛中ロータリー・クラブによる支援をうけて行われている「ゾウの繁殖プロジェクト」の成果の一部をわかりやすく紹介していきます。

著者プロフィール

安井 早紀(やすい・さき)

2009年、大阪大学理学部生物科学科卒業。京都大学野生動物研究センター、修士課程にてゾウの遺伝子に関する研究を始める。博士後期課程では、約200頭のアジアゾウがゾウ使いとともに生活している、タイ、スリン県のタクラン村にて、アジアゾウの社会行動についての研究を行う。2014年3月に研究指導認定退学後、4月より京都市動物園で飼育員として勤務している。

カテゴリー

カテゴリー一覧

このカテゴリーの他の記事

ページTOPへ

Copyrights © 2010 Doubutu-no-kuni All Rights Reserved.
誌面、Webにおけるあらゆるコンテンツの無断複写・転載を禁じます。