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Vol.30 ライチョウの未来は?

2025.3.11

 ニホンライチョウの未来における最大の危機は、地球温暖化による生息環境の消失と食糧不足です。今世紀末までに主要な栄養源である高山植物が絶滅すると予測されており、これに伴いライチョウも絶滅の危機にさらされています。温暖化の影響はすでに深刻であり、高山植物の絶滅が約20年前から指摘されているにも関わらず、気温上昇の進行は止まることなく続いています。

温暖化こそが最大の脅威であり、その環境が未来に渡りそのまま必要なのです。

 温暖化の進行により、高山植物が失われると、それを餌とするライチョウも生存が難しくなります。さらに、亜高山帯植物が高山帯に進出することで、ライチョウの生息地がますます狭められる可能性があります。このような植物の進出を阻止することは、ライチョウの生態系を守るために不可欠です。しかし、これは高山植物だけの問題ではなく、生態系全体の問題であり、高山植物の維持だけでは不十分です。

 高山植物が温暖化に耐えられるような技術的改良も必要であり、主要な高山帯植物が全て温暖化に耐えられるような対策を短期間で確立することが求められています。このためには、植物の遺伝的多様性を活用した選別や、人工的な環境での栽培技術の開発が考えられます。それでも、亜高山帯植物の進出を阻止することは絶対条件です。ただ、これも現実問題として捉えれば、それを実現するのは厳しい現実の壁があるのではないでしょうか。

高山植物によって生かされているライチョウに未来はあるか?

 さらに、ライチョウ自身も温暖化の気温上昇に耐える必要があります。その影響が未知数であるため、ライチョウが温暖化に耐える進化を遂げることは、自然界では数十年という短期間で実現することはほとんど不可能です。ライチョウの適応力を高めるためには、飼育下での繁殖プログラムや、遺伝的多様性を確保するための保全活動が必要です。

 わずかな可能性として、生息地の保護や植物の改良、人工的な生息環境の提供などが挙げられます。これらが成功すれば、ライチョウが未来においても生き残る可能性がわずかに存在します。しかし、それは非常に厳しい条件の下での話であり、現実的には多くの困難が伴います。このように、現状のままではライチョウの未来は非常に厳しいものとなることを深刻に受け止めるべきなのではないかと私は考えます。

彼らのために今できることは何なのか、、、

 私たちが今、行動を起こさなければ、ライチョウの姿を未来の世代に伝えることはできなくなってしまうかもしれません。一人ひとりができることを考え、行動に移すことが求められています。ライチョウを守るために、私たちと一緒に立ち上がりましょう。未来のために、そして地球のために。

著者プロフィール

森勝彦(もり・かつひこ) 写真家

22歳でライチョウに魅せられて以後断続的にライチョウを撮影する。
発表媒体は写真集・TV・新聞・雑誌など幅広い。
写真展は過去20か所以上全国規模で開催。
書籍等では、奇跡の鳥ライチョウ(山と溪谷社)・ライチョウ愛情物語~ぼく、負けないよ~(パレード)日本の天然記念物ライチョウ(小学館)などで発表。

HP:ライチョウの小屋
https://www.raicyo-lodge.com/

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