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Vol.11 自然の神秘

2021.2.4

 今回は少し神秘的なお話をいたします。と言っても厳しい自然の中では当然のことなのかもしれませんが「着床遅延(ちゃくしょうちえん) 」って皆さんは聞いたことがありますか?正直に言いますと、動植物にあまり興味がない方はこの神秘的な生態を生涯知らずに過ごしてしまうかもしれません。

 

 

 どんなものかと言うと、オスメスで交尾をおこない精子と卵子が受精した後に、受精卵が子宮にすぐには着床せず、『子宮内にとどまる』という現象です。私たち人間は「そのまますぐに着床し母体で大きくなるのが当たり前」とする考えるからは想像もつきませんよね。

 

 

 この「着床遅延」が可能な動物たちはたいがいが未熟児で生まれるようで、前回カンガルーの出産のお話でもしましたが、カンガルーたちも未熟児で生まれてきます。有袋類だけではなく、イタチの仲間、アルマジロの仲間、アザラシ、クマの仲間などもそうです。

 

 

 この独特な「着床遅延」がなぜ?カンガルーでおこるかというと、自然災害やエサである草木の不作等で、繁殖・育児の環境が良くない時又は、すでに袋(育児嚢)に子供がいる時など、赤ちゃんが生まれると困る際に着床を遅らせて、また出産や育児の環境が整った時に着床し、確実に子孫を残していく仕組みです。
 アカカンガルーの妊娠期間がおよそ33日といわれているものの、「着床遅延」があるため、たとえば先月オスとの交尾を確認したが、実際にいつ妊娠(着床)したのか?正直わからなくなることがあります。ですので、この種は交尾した日から出生日を計算することがあまりできません。

著者プロフィール

小林哲也 (こばやし・てつや)

1973年2月13日生まれ。長野県出身。
2004年から須坂市動物園にて勤務。
現在アカカンガルーや猛獣、霊長類を担当。

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