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Vol.1 いしかわ動物園

2017.3.19

いしかわ動物園の紹介
 いしかわ動物園は、石川県にある県立の動物園です。大都市の大型動物園ではなく、ざっとみるだけならば2時間もかからないちょうど良いサイズの動物園です。園路は一筆書きになっていて、順路に沿ってみて回れば、ほぼすべての動物を見ることができます。今回、「トキに会える動物園」ということで「どうぶつのくに」に取り上げていただきましたので、トキやカメを中心にいしかわ動物園の紹介をしていこうと思います。

トキの絶滅と復活
 トキはかつて日本中で見られましたが、明治時代に狩猟により激減し、昭和時代の農薬使用で絶滅してしまった鳥です。石川県は本州最後のトキ「能里」がすんでいた場所です。

能登半島最後のトキ「能里」1970年1月に佐渡トキ保護センターに送られましたが、翌年死亡しています。

 その後、佐渡トキ保護センターでは国内産のトキを復活させようと、様々な努力がなされましたが、すでに農薬汚染が進んでおり、うまくいきませんでした。

 ところが、運のいいことに、中国の洋県というところに、7羽のときが生き残っていたのです。中国政府はその残ったトキをもとに、数を増やし野生復帰を果たし、日本にも寄贈してくださいました。新潟県の佐渡トキ保護センターでは、中国より贈られたトキをもとに人工繁殖に取り組み、2004年ごろには100羽ていどまで増殖させることに成功しました。

 しかし、佐渡だけでトキを飼育していると、伝染病などにかかったときに全滅してしまう恐れがあります。そのため、環境省は2003年にトキを分散飼育することを決め、飼育地を募りました。

トキ受入れに向けて
 石川県は本州最後のトキの生息地ということで、トキの分散飼育にいち早く手を上げ、いしかわ動物園でトキの飼育を目指すことになりました。ところが、その頃いしかわ動物園ではトキ類の飼育をしていませんでしたので、クロトキやホオアカトキといったトキの近縁種を多摩動物公園より導入し、トキの受入れに備え近縁種の飼育繁殖に挑戦することになりました。

水鳥の池 で飼育繁殖を開始したトキの近縁種

希少種の数を増やすには
 トキのような希少種をいち早く増やす為には、補充産卵性を利用します。補充産卵性というのは、繁殖シーズンのはじめごろに産んだ卵が、外敵などによって失われた場合、翌年の繁殖シーズンまで何もしないのはもったいないので、もう一度(もしくは二度三度)産卵する習性で、鳥類の多くの種で見られます。特に寿命の短い小鳥などでは、来年の繁殖期まで生きられる確率が低くなるので、なおさら補充産卵は大切です。蛇足ですが小鳥の場合は年に複数回繁殖し、多い場合は年に5回も子育てをすることがあるそうです。

 さて、補充産卵性を利用すると、通常4個しか卵を産まないトキに、8個から12個の卵を産ませる事ができます。ところがトキが育てられるのはせいぜい4羽なので、親鳥から取り上げた卵は人が孵化させて育てる必要があります。そのため、トキ近縁種で人工孵化、人工育雛の練習をすることで、いざトキを殖やす時に備えることになりました。

トキ類の雛の育て方
 トキやスズメのように巣の上で子育てをするタイプを晩成性といい、キジやカモなど生まれてすぐに歩き回ったり泳いだりできるタイプを早成性といいます。早成性の雛は自分で餌をついばむので、餌を多少細かくしたり、たんぱく質を高めたりという工夫をすれば比較的簡単に育ちます。一方で晩成性の雛は親鳥から口移しで数時間おきに餌をもらって成長するので、人が育てようとするとこまめに挿餌をしなければならず、それほど簡単ではありません。

 幸いクロトキの雛レシピは多摩動物公園で確立されていたので、それを少しアレンジすることでうまくクリアすることができました。雛が小さくて難しいといわれるホオアカトキやシロトキも、(大変でしたが)無事育て上げることができました。

トキ類の繁殖シーズンには一日4回の給餌に追われました。雛のステージが異なると、餌の種類や飼育環境も異なるので大変です。

 トキ類は小魚や昆虫などの小動物を食べる鳥なので、餌も動物質が主になりますが、クロトキの雛レシピには小松菜が入っていました。多摩動物公園での試行錯誤の結果、小松菜を混ぜると成績がよくなることが分かっていたのですが、これもトキ類の食性を考えると納得できます。トキ類が食べているバッタやタニシは、食べられる直前まで草や藻を食べていたわけですから、消化管の中には植物質がたっぷりです。実はトキ類は間接的に植物質を食べて、雛にも与えていると考えると、人工育雛飼料に小松菜を入れると上手く育つのというのも筋が通ります。

人工育雛期間中でも、日光浴は大切です

つづく

著者プロフィール

野田英樹(のだ・ひでき)

静岡県出身
小学生の頃から熱帯魚や小鳥の繁殖に明け暮れる。
大学では爬虫類に興味を持ち、淡水性カメ類の研究をする。
2004年 金沢大学大学院自然科学研究科博士前記課程修了

2004年よりいしかわ動物園で鳥類の飼育を担当し、トキ受入れに備えた。
2010年からはトキとカメ類の飼育繁殖に取り組んでいる。

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