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Vol.9 リクガメの生き方

2018.6.10

陸に棲むカメ

 日本にはリクガメが分布していません(化石は出土しているので、大昔はいたようです)ので、カメなのに水に入らないリクガメを、不思議に感じる人が多いようです。動物園でも「カメなのに水の中に入らなくて大丈夫なのですか?」と問い合わせを受けることがあります。今回はそんなリクガメの話をしようと思います。

リクガメの仲間は水に入らず、陸に暮らすため、うろこは硬く皮膚が分厚い種が多いです

 カメ目約300種のうち、1割の約30種がリクガメ科です。名前のとおり陸に棲むカメで、通常は水に入ることがなく、陸上で生活しています。陸上での暮らしに適応して、皮膚が固くなったり、鳥のようにおしっこを尿酸で排出したりといった特徴があります。水辺に棲むカメは危険が迫ると水に飛び込んで泳いで逃げることができ、すばしっこい種が多いのに比べ、リクガメの仲間はゆっくりのんびりというライフスタイルをしています。「ウサギとカメ」の童話に出てくるカメも、ギリシャリクガメがモデルになっているそうです。

 陸上でゆっくりのんびりしていると、あっという間に捕食者に食べられてしまいます。そのため、さまざまな手段で身を守っています。話はそれますが、固い殻を持っている生き物は、人間をはじめ捕食者にとっておいしいものが多いようです。確かに、カニやエビ、ウニや貝は、そう簡単には食べられませんが、中身はおいしいのです。ということは、固い甲羅を持つカメも(哺乳類のアルマジロなども)おいしいに違いありません。

 捕食者に食べられずにすむもっとも簡単な方法は、見つからないことです。そのため、多くのリクガメは甲羅に模様を発達させ、保護色になっています。水槽ではオシャレに見えるインドホシガメやヒョウモンガメも、草むらでじっとしていると見つけることができません。

インドホシガメは、森林に棲んでいます。茂みの中でじっとしているとまず見つけられることはありません。

 また、リクガメの仲間の特徴として、ドーム状の甲羅をしているということが挙げられます。平たい甲羅をしていると、上からの圧力に負けてつぶされてしまいますが、球に近い形であれば踏みつけられても簡単にはつぶされません。そんな理由でリクガメの仲間は甲羅に模様があってドーム状をしている種類が多いのです。

ヒョウモンガメは草原に棲んでいます。ネコ科のヒョウと同じように、豹柄をしていることで草むらで身を隠します。ドーム状の甲羅は簡単につぶされないための形です。

 一方で、保護色のはずの模様が先進国でのペット人気を高めてしまったという現実もあります。リクガメ科はすべてワシントン条約で商業取引が規制(禁止ではない)されていますが、種によっては絶滅の恐れの高い付属書Ⅰ(商業取引禁止)に指定されているものもあります。

 商業取引が禁止されているにも関わらず、密輸される事件が時折ニュースになっています。日本各地の動物園で飼育されているホウシャガメには、密輸されそうになったものが摘発され、本国に送り返すわけにもいかず、止むを得ず預かっている個体が含まれています。

マダガスカル南部に分布するホウシャガメは、その模様の美しさからペット目的で乱獲され、絶滅寸前になってしまいました。

 カメを食べようと狙う捕食者が沢山いる陸上で生き抜くためには、模様を発達させる以外にもさまざまな戦略があるようです。次回以降にご紹介いたします。

つづく

著者プロフィール

野田英樹(のだ・ひでき)

静岡県出身
小学生の頃から熱帯魚や小鳥の繁殖に明け暮れる。
大学では爬虫類に興味を持ち、淡水性カメ類の研究をする。
2004年 金沢大学大学院自然科学研究科博士前期課程修了

2004年よりいしかわ動物園で鳥類の飼育を担当し、トキ受入れに備えた。
2010年からはトキとカメ類の飼育繁殖に取り組んでいる。

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