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Vol.10 トキの破卵対策 その後

2018.8.9

どうしたら初期破卵を防げるのか?

 簡易巣台を設置し、自分たちで巣を作らせるだけでは、初期破卵を完全に防ぐことはできませんでした。そもそもメスが産卵するときに、オスがまだ繁殖モードに入っていないようなのです。オスとメスの発情をそろえるにはどうしたらよいでしょう。

 インコやフィンチなどの小鳥を繁殖するときに、春先に粟玉(むき粟に卵黄をまぶしたもの)やエッグフード(鶏卵やパンなどで作った餌)を与えると、雌雄共に発情して上手い具合に産卵して繁殖します。トキの場合は通年で昆虫やドジョウを食べているので、飼育マニュアルにはこのようなメリハリを付けることは書いてありません。しかし、真冬に採れる小動物と、春先に採れる小動物では多少栄養価が異なっているかもしれません。
 そこで、繁殖期に入る3月ごろから、馬肉人工飼料(馬肉やニンジン、ゆで卵や粉末飼料をミンチにしたもの)に入れるゆで卵を増量し、栄養価を高めてやろうと考えました。2シーズンほど試してみましたが、はっきりとした効果が得られなかったので、現在は元に戻しています。おそらく多少ゆで卵を増やしてもあまり効果がないのでしょう。

馬肉人工飼料は馬肉やにんじん、ゆで卵などと粉末飼料をミンチにして作ります

馬肉人工飼料は嗜好性が高いので、季節に応じて様々な成分を混ぜ込むことができます

 次は、冬の絶食日を設けることにしました。石川県もそうですが、野生のトキがすんでいる佐渡島は、冬になると雪が降ります。2~3日吹雪が続くと、野鳥は採餌どころではありません。じっと止まり木でやり過ごしています。

吹雪の日は止まり木でじっと耐えています。そんな日は餌もあまり食べません。

 これまでは天候にかかわらず毎日決まった量の人工飼料とドジョウなどの魚を給餌していました。それを野外での生態に合わせ、冬の間は週に1度絶食日を設けるほか、雪が降ったら魚を与えない、などの工夫をしてみました。この取り組みは継続中で、確かに雌雄の発情を同期させることはできているようです。ただし、別の理由で初期破卵や繁殖の失敗が見られるようになって来ました。やはりトキの繁殖は一筋縄ではいきません。

つづく

著者プロフィール

野田英樹(のだ・ひでき)

静岡県出身
小学生の頃から熱帯魚や小鳥の繁殖に明け暮れる。
大学では爬虫類に興味を持ち、淡水性カメ類の研究をする。
2004年 金沢大学大学院自然科学研究科博士前期課程修了

2004年よりいしかわ動物園で鳥類の飼育を担当し、トキ受入れに備えた。
2010年からはトキとカメ類の飼育繁殖に取り組んでいる。

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