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Vol.3 はじめてのトキの孵化

2017.5.16

初めての繁殖

 2010年1月に石川県にやってきた2組のつがいは、早速2月に繁殖羽になりました。トキの繁殖羽は首から出る黒い物質を自らこすり付けることで白色から黒色に変わります。おそらく林内での抱卵育雛の際に目立たないように進化してきたのだと考えられていますが、このような色の変わり方をする鳥はトキ以外には知られていません。

分散飼育開始直後に繁殖羽になりました。

 トキの初繁殖は、緊張の連続・・・かというと、それほどでもありませんでした。前年にみっちり佐渡トキ保護センターで研修を受けさせていただいたおかげで、有精卵さえ得られれば、人工孵化・人工育雛自体は(たいへんですが)それほど難易度は高くなさそうだったからです。それだけトキという鳥の人工繁殖技術は環境省、佐渡トキ保護センターによって高められていたということです。

トキの巣の中の卵。数を増やすため、取り上げて再度産卵させます。取り上げた卵は人工孵化させます。

順調に産卵

 初年度は、補充産卵性を利用して2~3クラッチの卵を得ることができました。卵は孵卵器であたため、28日後の孵化まで毎日卵重を測定します。鳥の卵は産卵直後から孵化まで、徐々に重さが軽くなっていくのですが、卵中の減り具合が適正でないと上手く孵化してこないことがあります。そのため、卵重減少が少なければ卵の表面を少しこすって水分が抜けやすくしたり、湿度の低い孵卵器に移したりします。逆に卵重減少が多すぎれば、卵の表面にワセリンを塗って水分の蒸発を防いだり、湿度の高い孵卵器に移したりします。

洗卵作業 孵卵器の中は雑菌にとっても快適な環境なので、卵を入れる前に専用の洗剤で洗います。

孵卵器へ卵を入れる様子。 37.3℃で管理すると28日で孵化に至ります。

緊張の初孵化

 初孵化の瞬間は、さすがに県内でも大きなニュースになるということで、トキ飼育繁殖センターに泊り込みで孵化予定時刻を迎えました。しかし、予定時刻を過ぎても孵化してこないため、介助孵化となってしまいました。今思えばあと2~3時間待てば勝手に孵化したとは思いますが、そのときは何かあっては大変と、世話を焼いたのです。

石川県で最初のトキの雛は介助孵化となりました。県知事が記者会見を開き、お祝いムードでいっぱいになりました。飼育担当としては、これから始まる人工育雛に期待と少しの不安を覚えた瞬間です

 こうして石川県初のトキの人工孵化は無事成功しました。そしてその後続々と誕生するトキの雛たちを、人の手で育てる日々が始まります。

著者プロフィール

野田英樹(のだ・ひでき)

静岡県出身
小学生の頃から熱帯魚や小鳥の繁殖に明け暮れる。
大学では爬虫類に興味を持ち、淡水性カメ類の研究をする。
2004年 金沢大学大学院自然科学研究科博士前期課程修了

2004年よりいしかわ動物園で鳥類の飼育を担当し、トキ受入れに備えた。
2010年からはトキとカメ類の飼育繁殖に取り組んでいる。

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