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Vol.2 トキがいしかわ動物園に来るまで

2017.4.7

いよいよトキの受入れ

 トキ近縁種の飼育繁殖に挑戦すること5年、トキ受入れ準備の集大成として、2009年には、佐渡トキ保護センターで30日間に及ぶトキ飼育繁殖研修を受けさせていただきました。その際、他のトキの分散飼育地となっていた出雲市や長岡市の担当者の方々とともに、実際にトキに触れ人工孵化や育雛を経験させてもらえたのです。

 研修の合間に、野外に放鳥されたトキのモニタリングにも同行させていただくことができました。野外放鳥による生息域内保全の取り組みを目の当たりにすることで、これから携わろうとしているトキの生息域外保全の重要性について、再確認することができました。2010年には分散飼育が開始するわけですが、この研修を受けさせていただけたことで、臆することなくトキの受入れができ、その後の繁殖成功につながりました。

佐渡トキ保護センターでの飼育繁殖技術研修では実際にトキの人工孵化、人工育雛を体験し、蓄積されたノウハウを学ぶことができました。


いしかわ動物園のトキ飼育繁殖施設

 トキ受入れに先立ち、いしかわ動物園ではトキ関連施設を整備してきました。トキを飼育するためのトキ繁殖ケージ、孵卵・育雛施設を伴う繁殖センター、ライブ映像を展示する動物学習センターのトキ展示映像コーナー等です。
 トキ繁殖ケージは5m×10mの部屋が5部屋並ぶ長屋式のケージです(後に繁殖ペアは二部屋つなげて10m×10mとしました)。ケージには止まり木や餌台、ドジョウ池などが配置されています。天井にはライブ映像用のハイビジョンカメラがあり、トキの映像を動物学習センターに中継し、来園客にご覧いただけるようになっていました。

トキ繁殖ケージ 園内の非公開エリアに整備されました。

 トキの分散飼育の目的はあくまでも繁殖でしたので、一般の来園客に公開することができませんでした。しかし、動物園が希少種の生息域外保全の取り組みを行なっていることを普及啓発することは、とても大切なことです。そこで、動物学習センターにトキに関する展示と、ライブ映像を置くことで、多くの方にトキについて知っていただき、現在のトキの様子をご覧頂くことができました(2016年11月まで)。

トキ展示映像コーナー ライブ映像や剥製、ジオラマ、クイズなどを通してトキについて深く知ることができました

 また、トキ飼育繁殖センターでは、記録映像が確認できるモニタールームのほか、孵卵室、育雛室が整備され、トキの繁殖に関する情報の管理センターとして機能しています。

トキ飼育繁殖センター 旧動物リハビリセンターを改修し、孵卵室、育雛室などを整備しています


ついに石川県にトキがやってきた

 2010年1月8日は、石川県最後のトキ「能里」が佐渡トキ保護センターに送られてちょうど40年目の日でした。この日に2ペア4羽のトキを佐渡トキ保護センターからいしかわ動物園に輸送しました。
 私は輸送二日前に佐渡入りし、受入れ後の飼育の最終確認と、移送準備、それから放鳥トキのモニタリングに同行しました。佐渡からいしかわ動物園まではフェリーと高速道路を使って10時間ほどかかります。雪の心配もありましたが、幸い輸送当日は好天に恵まれ、船も揺れることなく無事到着しました。

10時間かけて無事トキがいしかわ動物園に到着しました。日没後だったので、ケージ放鳥は翌朝になりました。

 こうして、いしかわ動物園でのトキの分散飼育がはじまりました。

つづく

著者プロフィール

野田英樹(のだ・ひでき)

静岡県出身
小学生の頃から熱帯魚や小鳥の繁殖に明け暮れる。
大学では爬虫類に興味を持ち、淡水性カメ類の研究をする。
2004年 金沢大学大学院自然科学研究科博士前記課程修了

2004年よりいしかわ動物園で鳥類の飼育を担当し、トキ受入れに備えた。
2010年からはトキとカメ類の飼育繁殖に取り組んでいる。

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