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Vol.15 公開施設の完成と公開準備

2019.5.15

 いしかわ動物園開園以来の大工事がようやく終わり、2016年8月に新しい施設が完成しました。いきなりここにトキを入れると、思わぬ不具合が見つかるかもしれませんので、クロトキやホオアカトキをここに入れて、しばらく様子を見ます。

新しい施設にクロトキとホオアカトキを入れて、不具合を確認、修正します。

 近縁種を試験的に飼育し、細かい修正をするといよいよトキの導入です。このケージには「Iペア」と呼ばれるペアと、当年生まれの幼鳥を入れて公開を迎えることになりました。Iペアは当時既に高齢ペアで、それまでに飼育下繁殖に十分貢献していたため、繁殖優先度が高くなかったということと、巣に卵やヒナを確認に行くと逃げることなく人に襲い掛かってくるほど人馴れしていたため、公開個体に選定されました。

Iペアのオス。さすがに新しい施設に移動すると、しばらくは落ち着きませんでした。

 新しい施設にトキを入れて、すぐに公開というわけにはいきません。トキを施設に馴らし、さらに通路を通る人にも馴らさなければならないからです。施設への馴化はすぐに進みましたが、問題は来園者への馴致です。公開前はお客様に入っていただくことができないので、動物園職員がせっせと通路を歩きますが、やはり人数に限りがあります。そこで、県庁から大勢の行政職員に来てもらって、通行訓練を行ないました。その際、「出来るだけ派手な格好で来てください」とお願いし、いつものスーツ姿の上からカラフルなコートを羽織って来ていただきました。

ケージ内の草刈りなどの日常作業にも馴らしていきます。

 来園者の約半分は子どもです。しかも遠足シーズンにはそれは賑やかに園路を走り回って動物園を楽しんでいます。「トキのところは静かにね」と言っても走り回るのは間違いありません。そのため、「観覧通路を子どもたちが走り回る訓練」も必要になってくるのです。

訓練の最終段階は、元気な子どもたちに協力してもらいました。

 この訓練には、ちょうど遠足できていた保育園の皆さんに協力してもらいました。最初の数組は静かに歩いてもらい、馴致が進んできた後半には、わざと自由に走り回ってもらいました。そのようにして、トキたちはガラスの向こうにいる二足歩行の生き物は怖くない、ということを学習していったわけです。

 観覧通路の通行訓練のほか、ガラス窓を叩いたり、カメラフラッシュをたいたり、想定しうるありとあらゆる出来事を、事前にトキに体験させました。トキたちは最初は驚いて飛び回りますが、次第に慣れっこになっていきます。こうしてトキの公開日を迎えました。

つづく

著者プロフィール

野田英樹(のだ・ひでき)

静岡県出身
小学生の頃から熱帯魚や小鳥の繁殖に明け暮れる。
大学では爬虫類に興味を持ち、淡水性カメ類の研究をする。
2018年 金沢大学大学院自然科学研究科博士後期課程修了 博士(理学)

2004年よりいしかわ動物園で鳥類の飼育を担当し、トキ受入れに備えた。
2010年からはトキとカメ類の飼育繁殖に取り組んでいる。

さらに最近はニホンライチョウにも携わっている。

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