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Vol.11 鎧をまとったリクガメ

2018.8.27

リクガメの身の守り方「鎧編」

 リクガメが捕食者から身を守る一番の方法は「見つからない」ことであると前回のコラムでお伝えしましたが、捕食者が沢山居る場所ではそんな悠長なことを言っていられないようです。アフリカ大陸のサハラ砂漠周辺の草原に生息するケヅメリクガメは、80cmに達する大型のリクガメですが、身を守るために体のつくりを特殊化させています。

オスのケヅメリクガメ。アフリカ大陸最大のリクガメで、丈夫で物怖じをしないことから動物園の展示動物としても大人気です。

 ケヅメリクガメの名前は漢字で書くと「蹴爪陸亀」となり、蹴爪があるのが特徴です。蹴爪というのは、キジ科のオスによく発達しているかかとにある爪のことで、ケヅメリクガメにはこの蹴爪が2対4本あります。

ちょうどふとももの場所、尾と後脚の中間に2本の立派な棘状の鱗があります

 これは甲羅の隙間の柔らかい部分を捕食者にかじられることを防ぐために発達した器官のようです。

子ガメのときにも小さい蹴爪がしっかりあります。

 また、甲羅の外側にある縁甲板とよばれる部分がのこぎりのようにぎざぎざで、しかも刃物のように鋭くなっています。これもまた身を守るための術で、ケヅメリクガメは持ち上げられそうになると体を大きく左右にゆすります。するとこの縁甲版がのこぎりのように相手に傷を負わせるのです。

のこぎり状の縁甲版も、天敵に対する防御となっています。さらに足には爪以外にも棘状の鱗が発達しています

 蹴爪と縁甲版で背後からの攻撃はかわすことができます。もちろん頭部側も防御策は万全です。カメは甲羅に頭を引っ込めることができますが、ケヅメリクガメの場合は更に守りを固めるために、鎧のような前足でガードできるようになっています。

頭を引っ込めて前足でガードすれば、そう簡単には食べられません。

 このように守りを固めたケヅメリクガメですが、いつまでもしつこくいじられると、突然走り出します。カメが走るといってもぴんと来ないかもしれませんが、実はケヅメリクガメは本気を出すと人の小走りくらいのスピードで走ることができ、このままでは危ないと感じると走って巣穴に逃げ込みます。巣穴に逃げ込めば、大型の捕食者は入ってこられませんから安心です。

 ケヅメリクガメは穴掘りが得意なカメで、冷え込む夜間や暑すぎる日中は巣穴の中で過ごしています。身を守るための縁甲版や頑丈な前足は、穴掘りにも役立っているようで、10m以上もある巣穴を掘ることもあるそうです。

ケヅメリクガメは穴掘りをしやすいように、リクガメの割に甲羅の厚みがありません。ドーム型をしていると引っかかるので平たい甲羅に進化してきたようです

 アフリカの草原にはライオンやハイエナ、マングースなどの捕食者がたくさん生息しています。少しでも身を守ることができるように、ケヅメリクガメは「アフリカのサバンナ仕様」に進化してきたことがよくわかります。

おまけ
 ケヅメリクガメのオスは喉甲板と呼ばれる腹甲の先端がフォークのようにとがります。オス同士が争うときはこの喉甲板を使って相手をひっくり返そうとします。ひっくり返され、自力で上がれないと死んでしまいますから、勝ったオスは周辺の餌やメスを独占できます。何世代もそれを繰り返した結果、現在のケヅメリクガメの姿が出来上がっているのです。

発達したオスの喉甲板。頭を引っ込めると最も先に出るのでオス同士の戦いで武器になります。

つづく

著者プロフィール

野田英樹(のだ・ひでき)

静岡県出身
小学生の頃から熱帯魚や小鳥の繁殖に明け暮れる。
大学では爬虫類に興味を持ち、淡水性カメ類の研究をする。
2004年 金沢大学大学院自然科学研究科博士前期課程修了

2004年よりいしかわ動物園で鳥類の飼育を担当し、トキ受入れに備えた。
2010年からはトキとカメ類の飼育繁殖に取り組んでいる。

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