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Vol.91 ガーナ5  アンカサ保護区とミゾコウモリ

2025.4.16

 2024年のガーナコウモリ旅。長年の憧れだったウマヅラコウモリを見ることができて、当初の目的は達成した。
 10月22日はウマヅラコウモリを見に行った以外は、アンカサ保護区を巡る。熱帯雨林が原始に近い状態で保存されている場所だという。保護区の中は、幌状の屋根のあるオープンカーの四輪駆動車でいく。アフリカのサファリというと連想するような車で、周囲が見やすい。この車のドライバーと、保護区のガイド、アパさんが銃を持って加わる。これまで乗ってきた車のドライバー、チャールズさんは、ここに滞在している間は休息だ。

チャールズさん(左)は、いろいろな民族衣装を着て、いつもおしゃれ。アンカサで乗り換えた車と、保護区のガイドのアパさん(右)

 保護区の中の道路はでこぼこで水が溜まっているところもあちこちにあり、今までとは比べものにならない悪路だ。ところどころ木も倒れていて鉈で切り開きながら進む。こちらのガイド助手のジョージさんも手伝っている。オープンカーなので、気を付けないと、道路にはみ出ている枝が顔にぶつかりそうになる。

伐開作業中。大きな木が倒れていて、これは無理じゃないか、と思えた場所も5分ほどで通行可能に

 道路にはみ出した枝に、モリアオガエルみたいに木の葉に泡を出して産卵した卵が見られる。下には水たまりがあるが、オタマジャクシはまだ孵っていないようだ。カンムリホロホロチョウGuttera pucheraniは、あいにく森に逃げ込む瞬間しか見られずに、道に残した羽をもらう。車を降りて森の中を歩くとアカハシマメサイチョウLophoceros camurus、コキバラオリーブヒヨドリPhyllastrephus icterinus、ミドリオヒゲヒヨドリBleda eximiusなどが見られる。

アカハシマメサイチョウ(上)とミドリオヒゲヒヨドリ(下)

 小さな池の端でゆっくり観察。ルリハシグロカワセミAlcedo quadribrachys、シロハラカワセミCorythornis leucogaster、コビトカワセミIspidina leconteiが次々現れる。

ルリハシグロカワセミ

コビトカワセミ

 水の中にはワニがいる。2匹が枯れ木に上陸してひなたぼっこを始めた。中州のようなところに低い木があり釣り巣がたくさんぶら下がっている。喉が鮮やかな赤で全身黒い鳥ノドアカモリハタオリMalimbus nitensの巣だ。オオトカゲの子どももいる。小さい頃は大人のオオトカゲに食べられないように葉の上にいることが多いそうだ。

左上の葉上にオオトカゲの子供がいる。右下にいるのがノドアカモリハタオリ

 夕食後もアンカサ保護区に行く。入り口は閉まっているが、押せば開く。入ってすぐのところのUmbrella treeと呼ばれる木に、ウロコクイナHimantornis haematopus 4羽が寄り添って寝ていた。

ウロコクイナ

 同じ宿のもう一組のバードウォッチャーたちも入れ替わりでウロコクイナを見に行った。彼らが戻ってきてからもう一度保護区に入って入り口の川をウマヅラコウモリが飛ぶのを見た。あいにくとまったのはかなり遠い枝だったのでよく見えなかったが。小型のコウモリもけっこう飛んでいる。
 10月22日の朝ご飯はパンケーキ(啓子)とマッシュルームオムレツとワッフル(夕志)。どこの宿でもご飯を食べた後すぐ次のご飯のメニューを決めなければならない。お腹がいっぱいのときに考えるのは気が乗らないが、材料を準備する関係だろうか。夕志はOmutou Groundnutのチキン(ピーナツ味の煮込み料理)に、啓子はBanku&Tilapia(トウモロコシやキャッサバを発酵させたちょっと酸っぱい主食とテラピアのグリル)にする。

朝食のパンケーキ(左上)とワッフル+オムレツ(左下)。昼食のBanku&Tilapia(右上)とOmutou Groundnutのチキン(右下)

 保護区の道路には、道をくぐるようにして水路のトンネルがいくつもあるのだが、そのうちの4つを確認する。最初のトンネルはカグラコウモリの仲間が1000頭以上いた。

カグラコウモリの仲間。種名はわからなかった。

 2番目のトンネルは1頭コウモリがいたが逃げてしまった。あと2つのトンネルにはミゾコウモリの仲間がいた。
 ミゾコウモリ科のコウモリは、これまで見たことがなかったので、これも嬉しい。ただ、ガーナには何種類かこの科のコウモリがいて識別が難しく、結局種までは同定できなかった。

ミゾコウモリの仲間。顔の中央に縦に溝があるのでこの名前が付いている

ミゾコウモリ科は、東南アジアからアフリカに欠けて14種が知られている

 今回のガーナの旅で泊まったのは、普段我々が泊まるような宿よりは1ランクか2ランク上でどこも快適。中でもこのアンカサリザーブロッジは、いちばんリゾートホテルっぽい部屋で、シャンプーまで置いてあった。昼食に戻ったときにロッジの電気がつかなかったが、ガーナでは他の宿でも、数分の停電なら時々あったので、窓からの光で明るいし、そのうち直るだろうとそのままにしておいたが、夕方散歩から戻ってもまだ電気がつかない。特に大きな電気機器も使ってないがブレーカーが落ちたようなのでフロントに言って直してもらう。部屋にはエアコンもあるが、思ったほど暑くないので、この旅を通して、どうしてもエアコンを使いたいという場面はわずかだった。
 ここの宿では毎朝部屋の鍵を返却させられたが、ベッドメイキングをするわけでもないので、なんでだろうと思っていたら、洗面所にある大きなかごに洗ってほしいものを入れておけば洗濯してくれるシステムだったらしい。リゾート的な宿には泊まり慣れていないので、思いもよらなかった。自分で洗面所で洗濯したのだが、熱帯雨林の中だけあって湿度が高く、ちっとも乾かない。

著者プロフィール

大沢啓子(おおさわ・けいこ)・大沢夕志(おおさわ・ゆうし)

1988年に南大東島でオオコウモリに出会って以来、コウモリに惹きつけられ、世界を巡って観察している。講演会や観察会、企画展示、書籍など、コウモリの魅力をたくさんの人に伝える活動をしている。動物園にやってくる野生のコウモリの観察会をすることもある。コウモリの会評議員、日本自然科学写真協会理事(夕志)。主な著書『身近で観察するコウモリの世界』『コウモリの謎』(誠文堂新光社)、『オオコウモリの飛ぶ島』『ふたりのロタ島動物記』(山と渓谷社)、『南大東島自然ガイドブック』(ボーダーインク)など。

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