日本全国の動物園と水族館をつなぐ情報誌、「どうぶつのくに」「どうぶつえんとすいぞくかん」公式Webサイト

どうぶつのくに どうぶつえんとすいぞくかん

Vol.63 スリランカ1 植物園でインドオオコウモリウォッチング

2022.12.13

 世界最大のコウモリといえば、ジャワオオコウモリPteropus vampyrusとインドオオコウモリPteropus giganteusがほぼ同格、大きいものでは翼を広げると2mくらいになる。ジャワオオコウモリの方はマレーシア、フィリピン、インドネシアなどで見る機会がずいぶんあったが、インドオオコウモリは動物園でしか見たことがない。
 スリランカでインドオオコウモリはごく普通に見られるという話は聞いていたが、長らく内戦が続いていて訪れるのは躊躇していた。その内戦が2009年5月に終了し、そろそろ落ち着いただろうということで、2012年1月に訪れることにした。キャンディのペーラーデニヤ植物園にインドオオコウモリのコロニーがあること、アヌラーダプラのイスルムニア精舎の岩の隙間にデマレルーセットオオコウモリRousettus leschenaultiiのコロニーがあること、イスルムニア精舎の天井にサシオコウモリがいるらしいとの情報は得ている。インドオオコウモリはあちこちの電線に感電死した死体がぶら下がっているらしい。

地図

 ちなみにこのインドオオコウモリ、インドとパキスタンの国境の北部まで生息していて、オオコウモリ属の中ではたぶん世界でいちばん北に住んでいる。日本にいるクビワオオコウモリの北限の口永良部島よりも少し高緯度になる。

 2012年1月7日、飛行機は予定通り現地時間の19時20分にコロンボ近くの国際空港に着いた。日本とスリランカは3時間半という半端な時差がある。外はかなりの雨が降り、雷も光っている。
 空港には日本に13年間住んでいたというガイドと運転手が待っていてくれた。今回は現地のツアー会社に宿の手配と共に、キャンディへの送迎を頼んでいる。スリランカは元イギリスの植民地のため車は左側通行だが、スリランカでは自分で車を運転したくはない。狭い道なのにしょっちゅう追い越しをかけて割り込み、道もあまりいいとはいえず、車酔いしそうだ。
 途中でティーブレイクがあって、ホッパーというお椀型のクレープを食べた。ホッパーは米粉とココナツミルクの生地を小さな丸い専用の鍋で焼いたもので、縁はパリパリ、真ん中はふわふわして、ほんのり甘い。2枚セットでミルクティーと一緒に食べるとおやつとしてちょうどいい。55ルピー(40円弱。当時は1スリランカルピー=約0.68円)。ミルクティーは最初からミルクと砂糖入り。

ホッパー

 休憩を含めて車で4時間ほどかけて中部の町キャンディにたどり着く。もう真夜中だ。キャンディは丘陵地帯で、丘の斜面の狭い道をくねくねと登ってホテル・トロピカーナにチェックインする。ホテルとはいっても、ペンションか民宿といった感じだ。エアコンのない部屋でいいのかと念をおされたが、標高が500m以上あるせいか、けっこう涼しかったので大丈夫。

 客室は2階にある。翌朝、玄関の真上にあるテラスに出ると、目の前にマンゴーの木があって、動物の囓った跡があるマンゴーが3つ落ちている。オオコウモリだろうか。その他クローブの木や胡椒もある。さすがスパイスの国だ。

食堂の先にテラスがある

 ホテルは朝ご飯付きで、スリランカ式朝ご飯もできるというので、それを頼んだ。魚カレーと豆カレーそして、ロティという小麦粉に削ったココナツを入れて練って焼いたものがでる。マレーシアで食べる薄いロティチャナイと違って、こちらのロティは丸くて厚くてどっしりと重い。フルーツも付く。

朝食

 ホテルでトクトクというオート三輪車のタクシーを呼んでもらってペーラーデニヤ植物園に行く。植物園まで300ルピー。
 植物園は入場料1100ルピー(750円ほど)。これはスリランカの物価からすると桁外れに高い。何しろ植物園から町の中心部に行くバスが20ルピーするかどうかだ。まあバスは逆に桁外れに安いのだけど、トクトクで町中を移動すると200~300ルピーである。町中の食堂で食事をすると二人で400ルピーくらい。ところで植物園の券売所には、英語の料金表示の隣にシンハラ語と思われる値段表が別にあって、読めないけれど多分こちらは入場料50ルピーと書いてある。地元の人の憩いの場なのはいいけれど、ここまで露骨に入場料の差をつけなくてもいいのでは。
 今日は日曜日である。観光客も多いが、家族連れやデートをしている人たちも多い。特に目をひいたのが、結婚式の記念撮影をしているカップルが何組もいることだ。ドレスアップした花嫁と花婿にビデオ係とカメラ係が一組になって公園内のあちこちで撮影して回っている。
 インドオオコウモリの大コロニーは、植物園の正門を入って中央の通りをまっすぐ奥に進んだところにあるらしい。

広場の先の木にオオコウモリがぶら下がっているのが見える

広場の先の木にオオコウモリがぶら下がっているのが見える

 途中で、頭髪が長く放射状に生えているサル、トクモンキーMacaca sinicaの群れに出会った。あちこちでインドシマヤシリスFunambulus palmarumも見かける。芝生の上はシロハラアマツバメApus melbaが飛び交っている。

トクモンキー。頭(左下)を見るとカッパのようだ。

インドシマヤシリス

 インドオオコウモリの声が聞こえてきた。昼間から飛び回り、騒がしい。植物園の奥から西側にかけて、かなり広い範囲の木々にぶら下がっている。

青空をバックに飛ぶインドオオコウモリ

クリスマスツリーのオーナメントのようにぶら下がるインドオオコウモリ

 2002年9月の調査では24,480頭いたとのことだ。コロニーの上を低くシロハラウミワシHaliaeetus leucogasterの若鳥が飛ぶが、インドオオコウモリはまったく動揺していない。さすが世界最大のコウモリだ。
これだけオオコウモリがいるので死体も落ちていた。前腕(人間でいうと肘から手首までの長さで、コウモリを測るときはここを第一に測る)は20cm弱だった。いちばん身近なアブラコウモリの前腕が3.5cmくらい、南西諸島のクビワオオコウモリでも12~14cmくらいだから、かなり大きいことがわかる。

枝からぶら下がるインドオオコウモリ

 帰りはバスでキャンディの町まで出た。一人20ルピー。トクトクと比べるとずっと安い。キャンディ湖のまわりに、仏陀の犬歯があるとされる寺院などの観光名所や商店街が広がっている。
 ホテルに戻るにはもう一度バスに乗るのだが、バスの前部に表示されている行き先はシンハラ語なのでまったく読めない。ホテルで書いてもらったシンハラ語の行き先をあちこちで見せて、ドワンダワという名称を尋ねて、やっと乗ることができた。宿の看板前でバスを降りて、そこから300mほど坂を登ると宿に着く。

著者プロフィール

大沢啓子(おおさわ・けいこ)・大沢夕志(おおさわ・ゆうし)

1988年に南大東島でオオコウモリに出会って以来、コウモリに惹きつけられ、世界を巡って観察している。講演会や観察会、企画展示、書籍など、コウモリの魅力をたくさんの人に伝える活動をしている。動物園にやってくる野生のコウモリの観察会をすることもある。コウモリの会評議員、日本自然科学写真協会理事(夕志)。主な著書『身近で観察するコウモリの世界』『コウモリの謎』(誠文堂新光社)、『オオコウモリの飛ぶ島』『ふたりのロタ島動物記』(山と渓谷社)、『南大東島自然ガイドブック』(ボーダーインク)など。

カテゴリー

カテゴリー一覧

このカテゴリーの他の記事

ページTOPへ

Copyrights © 2010 Doubutu-no-kuni All Rights Reserved.
誌面、Webにおけるあらゆるコンテンツの無断複写・転載を禁じます。