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どうぶつのくに どうぶつえんとすいぞくかん

Vol.62 サンダカン2

2022.11.16

 2014年10月のボルネオ島東部サンダカンへのコウモリ旅の続き。

 宿のオーナーに「コウモリを見に来た」と言ったら、それを聞いていたスタッフが、スタッフ棟の軒にコウモリがいるのを教えてくれた。コバナフルーツコウモリ属のコウモリだ。この属は識別が難しく、種名まではわからない。4-5頭いることもあると言っていた。

コバナフルーツコウモリの仲間

 車で1時間半ほどの所にコウモリとオオアナツバメAerodramus maximusで有名なゴマントン洞窟がある。そこへ行くツアーに参加した。
 ゴマントン洞窟へは、料金所から入って森の中をしばらく歩いて行く。洞窟入口まで歩く途中でクリムネアカメヒタキPhilentoma velataなどを見る。
 ツアーとはいっても参加者はわれわれだけなので、コウモリの写真を撮るために好きなだけ立ち止まったりできた。入口近くにはグールドカグラコウモリHipposideros cervinusがいた。塊になっているのはクレーキクガシラコウモリRhinolophus creaghiのようだ。

左半分にいるグールドカグラコウモリは一定の間隔を開けて壁に止まる。右にいるのはオオアナツバメ

クレーキクガシラコウモリと思われる

 ゴマントン洞窟でいちばん多いコウモリは、ヒダクチオヒキコウモリChaerephon plicataで200万頭ほどいるはずだが、高い天井にいるのだろう、はっきり見えなかった。オオアナツバメもゴマントン洞窟に150万羽ほどいるはずだが、繁殖期ではないので、巣には入ってないはずだ。いずれにせよ高さ15m以上の壁や天井に巣をつくるようなので、下から見ていてもよくわからない。巣を採集するための梯子が洞窟に置いてあった。この鳥は主に唾液で巣をつくり、中華料理の高級食材である燕の巣として利用される。暗い洞窟内を飛ぶため、コウモリのようにエコーロケーションをする鳥としても知られている。
 夕方17時頃、まだ明るいうちに出巣が始まったので、慌てて外に出る。駐車場の上に展望台があり、山の裏から、空をうねうねと龍のように飛んでいくのが見える。たぶん大部分はヒダクチオヒキコウモリだが、他にもたくさんの種類のコウモリがゴマントン洞窟をねぐらにしている。

ヒダクチオヒキコウモリの集団

川の流れのように飛んで行くヒダクチオヒキコウモリ

 空には猛禽が飛んでいる。ガイドはBat Hawk(コウモリダカ)だといっていたけど違うと思う。17時半に雷が鳴り大雨が降ってきた。残念だが急いで片付けて車に戻る。

 ホテルから歩いて5分ほどのところにセピロク・オランウータン・リハビリテーションセンターという施設がある。ペットとして飼育されていたオランウータンや、親が殺された孤児のオランウータンを保護し、森に戻すためのリハビリ施設として1964年に開設されたもので、今年50周年となる。滞在中の2014年10月9日にその記念行事が行われるとのことで見に行った。
 ホテルのすぐ近くなので朝からスピーチをやっているのが聞こえてくる。9時半頃行くと、まだ来賓挨拶の真最中だった。入口で名前を書くと記念のうちわとキーホルダーと昼食の引換券をくれた。

式典の様子と記念品や昼食のセット(右上)

 

 駐車場にテントを立てて会場としているので、ゲートの外に臨時駐車場があるものの道路に車があふれている。通常は30リンギットのボードウォークが今日は無料になるのだが、式典が終わってからだというので、ビジターセンターの展示や外のテントにあるWWFの展示などを見て過ごす。オランウータンの着ぐるみを着た人がいて暑そうだ。
 スピーチが終わり、VIPを先頭に同じ敷地にあるマレーグマ保護センターの方へみんな向かっていく。新しいビジターセンターがオープンしたようだ。こちらも普段30リンギットする入場料が無料だ。ちょうど餌をもらったところらしくバナナ、木の実などを食べに5頭が出てきていた。

マレーグマ

 オランウータン保護区のボードウォークもオープンしたので歩いていくと、コースの途中に餌場があった。
 午後から新しい野外リハビリセンターという施設もオープンするのだが、この日は昼食を受け取ってホテルに帰った。
 野外リハビリセンターは、翌日見に行った。ガラス越しに屋外運動場で遊んでいるオランウータンが室内から観察できる施設だ。2頭のオランウータンが遊んでいた。オランウータンの歩き方を見ていると、足も手のように器用に使い、手が4本あるみたいだ。夜は屋根をねぐらとしている個体もいる。

オランウータン。足も手のようだ(左下)

 ここには、オランウータンのほかにも、何種類かサルが生息している。尾が短いのはブタオザル、尾が長くてニホンザルと雰囲気が似ているのはカニクイザル。

ブタオザル

食堂で買ったバナナの葉で三角形に包んだ「弁当」(上)。辛いソースが付いていて、マレーシアではよく見かける。売店で買ったおやつの豆入りせんべいみたいなもの(左下)とサモサ(右下)

 リハビリテーションセンターでは、夜のツアーもやっていて、これにも参加した。正面ゲートでいくつかのグループに分かれ、それぞれにレンジャーのガイドがつく。歩いて行く途中でサイチョウBuceros rhinocerosやキュウカンチョウGracula religiosa、キタカササギサイチョウAnthracoceros albirostrisなどが見られた。オランウータンが木の上で寝ようとしていたり、ムササビが遠くを飛んでいるのを見る。Pit Viperの仲間かと思われる白っぽい毒蛇が、歩道沿いのあちこちの木の上にいて、レンジャーによれば、ネズミやヤモリを待っているのだという。

サイチョウ(右)とPit Viperの仲間(左)

小コウモリがけっこう飛んでいる。ズグロヤイロチョウが木にとまって寝ていたが、足元をよく見ると蚊がたくさん集まっていて痒そうだ。セアカミツユビカワセミCeyx rufidorsaも寝ていた。

足元に蚊がたくさん集っているズグロヤイロチョウ

セアカミツユビカワセミ

 10月13日、クアラルンプール経由で帰国の途へ。台風に先をゆずって飛行機は遅れたが、成田上空はきれいに晴れ上がっていた。

 ゴマントン洞窟は、天気にめぐまれずに出巣が十分に見られなかったが、なかなか壮観であることはわかった。コウモリ撮影としては、熱帯はコウモリが豊富すぎて、種名がわかるものがあまりいなかったのが残念だ。

著者プロフィール

大沢啓子(おおさわ・けいこ)・大沢夕志(おおさわ・ゆうし)

1988年に南大東島でオオコウモリに出会って以来、コウモリに惹きつけられ、世界を巡って観察している。講演会や観察会、企画展示、書籍など、コウモリの魅力をたくさんの人に伝える活動をしている。動物園にやってくる野生のコウモリの観察会をすることもある。コウモリの会評議員、日本自然科学写真協会理事(夕志)。主な著書『身近で観察するコウモリの世界』『コウモリの謎』(誠文堂新光社)、『オオコウモリの飛ぶ島』『ふたりのロタ島動物記』(山と渓谷社)、『南大東島自然ガイドブック』(ボーダーインク)など。

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