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Vol.105 マダガスカルその2 研究者も興奮のサラモチコウモリ

2026.6.16

 2025年11月のマダガスカルでのコウモリ探し、2つ目の目標はマダガスカルルーセットオオコウモリだ。
マダガスカルルーセットオオコウモリのねぐらは、アンダシブから10kmほどのところにあるマロミザハ保護区Maromizaha Protected Areaの中の岩山である。まずは捕獲個体を見せてもらう。ここでコウモリの研究をしているベールさんという女性ともう一人男性のスタッフが、マダガスカルルーセットオオコウモリを4頭捕獲して、車を降りてすぐのところにある広場で待っていてくれた。ルーセットオオコウモリたちはご褒美としてサトウキビのジュースをもらっていた。メスはお腹が大きい。12月にこどもを産んで母子は一ヶ月ほど一緒にいるという。一頭のオスには外部寄生虫bat flyがついていた。
 広場の地面には所々草むらがあり根元には、マダガスカルヨタカCaprimulgus madagascariensisが座っていた。抱卵しているようだ。ニシノビタキSaxicola torquatusも見かけた。

ニシノビタキ(左)と、枯れ草にまぎれて教えてもらわないとどこにいるかわからないマダガスカルヨタカ(右)

 マダガスカルルーセットオオコウモリのねぐらは広場から岩山の険しい坂道を15分ほど登っていったところに入り口がある。洞窟状になった岩山の割れ目の上の方の隙間にかなりの数が入っているようだが、天井が複雑になっていて真下からは見えないところが多くとても見づらい。

サトウキビジュースをもらってご機嫌を直した?マダガスカルルーセットオオコウモリ(左)。岩山の隙間にいるマダガスカルルーセットオオコウモリ(右)

 2時間ほど観察し、撮影する。洞窟にはムナフショウドウツバメPhedina borbonicaもいる。
 洞窟入口への道は途中はロープにすがりながら上るところもありなかなか傾斜がきつく、昨夜のハードワークのせいか啓子は足が頻繁に攣るので、女性三人は暗くなる前に先に降りて広場で待つ。日没が近づいて暗くなってくると先ほど地面に座っていたマダガスカルヨタカがクックッククルルルルと大きな声で鳴きながら飛ぶ。飛んだ後、座っていたところを見ると、卵が二つあった。暗い空から同じような声があちこちからするので何羽もいるようだ。
 男性陣は出巣時間を過ぎるまで洞窟の入口のすぐ外に待機していたが、マダガスカルルーセットオオコウモリは、思ったほどたくさんは通過しなかった。ほかにも出口がいくつかあるようだ。

飛翔するマダガスカルルーセットオオコウモリ

 出巣が一段落したところで、男性陣も急な坂道を降り、広場で先に降りた三人と合流して、少し下で待機している車まで戻る。
 途中ヤマビタイヘラオヤモリUroplatus rikoraeを観察。

ヤマビタイヘラオヤモリ

 車で保護区の事務所のような建物に移動して、ここの保護区でコウモリ調査をしている方たちに会う。ドイツの研究者たちの手伝いをしているという男性4人が、捕獲されて布袋に入ったコウモリを出してくれた。一頭目を出したところで、全員が「ミソポタ!」と叫ぶ。耳が大きく翼の前縁の親指の根元と足首の4カ所に吸盤状の器官が特徴的で見間違いようのないサラモチコウモリMyzopota auritaである。彼らは16年間マダガスカルでコウモリの調査をしているが初めて見たという。裏の坂道の竹の茂みの高いところに幅6mの霞網を6mの高さで張ってとれたという。網から外すのは彼らとは別の助手(助手の助手?)がやるので、彼らも今初めて袋の中を見たという。皆興奮して写真をたくさん撮る。

サラモチコウモリの顔は、ちょっとブルドックのよう(左)。翼の前縁の親指のあたりにある「吸盤」の上側(右)。

 中南米にやはり吸盤状の組織を持つスイツキコウモリの仲間がいて、ネット上に透明なコップの内側に吸い付かせて撮った写真があり、吸盤の様子や働きを見るのによかった。今回、それを真似て、日本を出発する直前に透明アクリルのコップを購入して持ってきたのだが、彼らの許可を得て捕獲したサラモチコウモリを入れてみたら、見事に内側に吸い付いた。

コップの中のサラモチコウモリ。頭を上向きにして張り付くのが特徴

 このあと他のコウモリもコップに入れてみたのだが、サラモチコウモリ以外のコウモリは当然内側に張り付くことはできない。よく見るとサラモチコウモリの吸盤のあとがコップについている。吸盤から液体を分泌して張り付くと図鑑に書いてあるが、確かに何か分泌しているようだ。
 このほかにマダガスカルサシオコウモリEmballonura atrata、マナヴィユビナガコウモリMiniopterus manavi、種不明のアブラコウモリ属Pipistrellus sspを見せてもらう。

コップの中のサラモチコウモリ。頭を上向きにして張り付くのが特徴

 このあと他のコウモリもコップに入れてみたのだが、サラモチコウモリ以外のコウモリは当然内側に張り付くことはできない。よく見るとサラモチコウモリの吸盤のあとがコップについている。吸盤から液体を分泌して張り付くと図鑑に書いてあるが、確かに何か分泌しているようだ。
 このほかにマダガスカルサシオコウモリEmballonura atrata、マナヴィユビナガコウモリMiniopterus manavi、種不明のアブラコウモリ属Pipistrellus sspを見せてもらう。

コップの中のマダガスカルサシオコウモリ(上)。マナヴィユビナガコウモリ(下)。ユビナガコウモリの仲間は頭のてっぺんが盛り上がっていておでこが広く見える

 ホテルに戻ったのは21時過ぎで、夕食はもうわれわれだけだった。ホテルの従業員はわれわれのために帰れなかったのではないだろうか。啓子はベジタリアン用のメニューから見つけたチリコンカン、夕志はゼブ牛のステーキだ。

セブ牛のステーキ(左)と、チリコンカン(右上)、デザートのアイスクリーム(右下)

 翌11月10日、今日は東海岸に出て北上してフルポワントFoulpointeという町まで280kmの大移動の日だ。朝食後出発。
 道沿いにある昨日のマロミザハ保護区のビジターセンターMaromizaha Welcome Centerへ寄っていく。マダガスカルの生き物の刺繍をした帽子やエコバッグをいろいろ売っている。マダガスカルオオコウモリの刺繍をした帽子を2つ買う。昨日案内してくれたベールさんが刺繍したという。2万アリアリと2万5千アリアリ(約695円と870円)。もう一つ残ったマダガスカルオオコウモリの刺繍のついたキャップも後ほど帰り道に寄って購入したので、結局3つとも買い占めた。

オオコウモリの刺繍のある帽子のあった棚(上)。キャップとハット合わせて3つあった(下3枚)

 大きな町ではコンクリートやレンガでつくった家が多いが、道路沿いから見る田んぼやプランテーションの中の小さな集落の家は木や竹でつくられて屋根はタビビトノキの葉で葺いてある。川で砂金を洗っている光景も見た。
 途中のガソリンスタンドでトイレ休憩をする。チャバラツバメチドリGlareola ocularisがガソリンスタンドの正面の屋根にいた。
 タビビトノキがたくさん生えている道ばたの日陰でオープンサンドの昼食をとる。

こんな景色の中で昼食(左)。揺られてバラバラになったオープンサンド(右)

 マダガスカルの東海岸、インド洋まで辿り着いた。海沿いに北上して、タマタブTamatave(トアマシナToamasinaとも呼ばれる)というアンタナナリボに次ぐマダガスカル第2の都市を通る。大きな港町だ。

地図 マダガスカル中部

 さらに北上してフルポワントのホテルに到着。アナラロッジホテルan’Ala Lodge Hotelはバンガロー群の並ぶ旧館と2階建ての棟が並ぶ新館があり、新館の方に泊まることになった。

著者プロフィール

大沢啓子(おおさわ・けいこ)・大沢夕志(おおさわ・ゆうし)

1988年に南大東島でオオコウモリに出会って以来、コウモリに惹きつけられ、世界を巡って観察している。講演会や観察会、企画展示、書籍など、コウモリの魅力をたくさんの人に伝える活動をしている。動物園にやってくる野生のコウモリの観察会をすることもある。コウモリの会評議員、日本自然科学写真協会理事(夕志)。主な著書『身近で観察するコウモリの世界』『コウモリの謎』(誠文堂新光社)、『オオコウモリの飛ぶ島』『ふたりのロタ島動物記』(山と渓谷社)、『南大東島自然ガイドブック』(ボーダーインク)など。

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