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Vol.106 マダガスカルその3 アナララバ特別保護区

2026.7.16

 2025年11月のマダガスカルコウモリ旅の4日目、大移動をして東海岸のフルポワントのホテルにチェックインした。
アンジェロは2018年にここでコウモリの研究を始めたということで、このあたりのことをよく知っている。ホテルの旧館の入り口のココヤシの木を熱心に見ていたが、早速アフリカツームコウモリTaphozous mauritianusが幹にとまっているのを見つけてくれた。

アフリカツームコウモリ

 この日は夕食を食べて終了。炭火で焼いた骨付き鶏肉がおいしかった。

サラダとローストチキン。鶏肉は、食べるところは少なく堅いが、とてもおいしい

 翌11月11日は、朝食後7kmほど内陸寄りにあるアナララバ特別保護区 Analalava special reserve(La Réserve Spéciale d’Analalava)へ向かう。道がかなり悪くて4輪駆動車でも難しいらしく、今回はトクトクという3輪車を雇った。運転手を含めて6人で1台なので満員だ。運転席の左右にはガイドのセルジュとアンジェロが座ったが、車にドアはなく、掴まっていないと落ちてしまう狭さだ。途中の道は、先日の車中泊した道ほど深くえぐれてはいないが水たまりが多く泥々だ。水たまりを避けて右へ左と蛇行して走るが、やはり完全に泥にはまって動けなくなって、運転手以外全員降りて押す場面もしばしばあった。ただ4輪駆動車に比べてトクトクの方が軽い分、押して脱出するのは簡単だ。

ガソリンを補給しているところ。道ばたでペットボトルに入った液体を売っていて、何かおいしい飲み物かと思ったらガソリンだった(上)。こんな道が続く(下)

 50分ほど悪戦苦闘しながらたどりついたアナララバ特別保護区は229ヘクタールの常緑樹林だ。

到着したアナララバ特別保護区の入口付近の広場

 駐車場付近には環境教育用のホールや研究者が泊まる施設などがある。この保護区には年間50人ほどのお客さんが来るそうだ。途中動物や植物の説明板も随所にある。森に入る入り口には観光地によくある顔出し記念撮影ポイントがあるのは、学校の子どもたちがやって来ることがあるからか。オオコウモリのぶら下がる木の下にたたずむデザインだ。もっとも子どもたちはここに5種生息しているキツネザルや26種のヤシを見に来るのであって、われわれがこれから見にいくマダガスカルオオコウモリのコロニーまでは行かないという。
ここで現地ガイドのアルセンさんが加わる。森の中を歩くとすぐに赤茶色の胴長の獣が枝の上を伝って逃げていった。ワオマングースGalidia elegansだ。カンムリジカッコウCoua cristataやアオジカッコウCoua caeruleaも枝から枝へと渡っていく。
森の中はコウモリという意味のFanihyの矢印に従って歩く。遙か離れたマリアナ諸島でオオコウモリのことをFanihi(ファニヒ)というのだが、似ている。

顔出し看板から顔を出すアンジェロとセルジュ(左)。Fanihyの矢印(右)

 1時間半ほど歩くと、オオコウモリのコロニーの真下に出た。頭上の高い木々にマダガスカルオオコウモリがぶら下がっているのが見える。しばらく観察、撮影をする。真上なので、首が痛くなる。

真下から見上げたマダガスカルオオコウモリ親子

 さらに歩くこと1時間弱、谷間を見下ろす場所にかつて展望台だった建造物が建っていて、登るとオオコウモリのコロニーが見渡せる。オオコウモリのねぐらは谷間の対岸で遠いが、何頭か飛んでいるのが見える。眺めは素晴らしいが、手すりがみんな壊れているので、夢中になるとあぶない。何かに驚いたのか突如1000頭くらいのマダガスカルオオコウモリが飛び立ち、谷間を旋回したり、こちらに飛んで来るものもいる。

空いっぱい飛び交うマダガスカルオオコウモリ

 何度かこのようなことが起こり、われわれのいる展望台のすぐ近くの木にとまる個体も増えて、ちょうど目の高さでよく観察することができた。

目の前の木にとまったオオコウモリ

 全体では一万頭くらいはいるようだ。この谷間は2004年から保護区になったが、谷間の向こうの保護区の外には集落がいくつかあり、昔はここのオオコウモリをとってタマタブで売っていたというから人の姿に敏感なのだろう。結果的に反対斜面の展望台で見ているわれわれの近くに、どんどんオオコウモリが来てくれた。

近くを飛ぶオオコウモリ

 展望台でガイドさんが運んでくれたパニーニのランチを食べる。
 すぐ下の草地の枯れ木にマダガスカルハチクイMerops superciliosusがとまっていてよく見える。アルセンさんが薬用になる植物の解説をしてくれる。
 帰り道にはシロビタイキツネザルEulemur albifrons 7頭の群れにであった。和名の通りオスは頭が白いがメスは全身茶色だ。こどもが一頭メスの体に抱きついていた。

マダガスカルハチクイ(左)とシロビタイキツネザル(右)

 保護区入り口に14時半過ぎに戻る。広場ではマダガスカルオウチュウDicrurus forficatusが賑やかに鳴いている。前頭部の換羽が特徴だ。白黒のマダガスカルタンビヒタキ Pseudobias wardiが早口のトリルで鳴きながら駐車場の木から木へと移動していく。ムラサキサギArdea purpureaがふわふわと飛んで行く。チェバートオオハシモズLeptopterus chabertも来た。

マダガスカルオウチュウ(左上)とチュバートオオハシモズ

 バンガロー風の休憩場はレストランという表示があるが、お客さんなど来そうにない。研究者が泊まる時には使うのかもしれない。
 緑色の体長25cmほどあるオオヒルヤモリPhelsuma madagascariensisが柱にいた。アンジェロさんがタビビトノキの根元に隠れていたマンテラカエルの仲間(アデガエル属、キンイロマダガスカルガエル属とも言われるようだ)Mantella ebenauiを見つけてくれた。2色模様のカエルだ。手のひらの上でひっくり返すと動かなくなってしまう。毒があるようだが、それほど強くないのだろうか。

腹側が美しいマンテラカエル(左上下)とオオヒルヤモリ(右)

著者プロフィール

大沢啓子(おおさわ・けいこ)・大沢夕志(おおさわ・ゆうし)

1988年に南大東島でオオコウモリに出会って以来、コウモリに惹きつけられ、世界を巡って観察している。講演会や観察会、企画展示、書籍など、コウモリの魅力をたくさんの人に伝える活動をしている。動物園にやってくる野生のコウモリの観察会をすることもある。コウモリの会評議員、日本自然科学写真協会理事(夕志)。主な著書『身近で観察するコウモリの世界』『コウモリの謎』(誠文堂新光社)、『オオコウモリの飛ぶ島』『ふたりのロタ島動物記』(山と渓谷社)、『南大東島自然ガイドブック』(ボーダーインク)など。

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