2025年マダガスカルコウモリ旅も終盤。11月3日、東海岸のフルポワントから来た道を南下しタマタブへ向かう。

道ばたの露天ではカシューナッツの下にできるカシューフルーツ(カシューアップル)を売っている。花は7月に咲き、カシューフルーツはこの時期にお店に並ぶ。マダガスカル北部では食べるようだが、かぶれることがあるという。試したコーディネーターさんが口の周りが痒くなったというのでやめておく。

カシューフルーツを売る少年(左)。フルーツの上の茶色い部分にカシューナッツがある(右)
午前中にタマタブのシャロンホテルSharon Hotelに着きチェックイン。部屋には小さな冷蔵庫があり、Wi-Fiがホテル内どこでも使え、パッションフルーツのウェルカムドリンクとイチゴのミニケーキまで出してくれて、ずいぶん都会的なホテルだ。ちょっと仮眠してからお昼ごはん。かぼちゃのスープと鶏とライス。
14時に、これから行く私設保護区イブルイナ公園Parc Ivoloinaを経営しているMadagascar Fauna and Flora GroupというNGOのディレクターにあいさつにいく。日本の上野動物園の援助も受けているようだ。
イブルイナ公園は宿から14km、車で30分ほどのところにある。

イブルイナ公園の入口の門(左)と看板(右)
セルジュによれば、ここはサラモチコウモリの調査報告書があって過去に13頭捕獲されていて、いちばんのおすすめの場所である。公園に行く途中、狭いオフロードを通るのだが、途中の家の椰子の木にサシオコウモリと思われるコウモリがいたり、川の畔の木にパンサーカメレオンFurcifer pardalisがいたのでしばらく観察する。マダガスカルというと、そこら中にカメレオンがいるイメージだったのだが、今回の旅で見た唯一の野生のカメレオンだった。

パンサーカメレオン
公園の入り口からちょっと入ったところに教育施設や研究者が泊まる棟などが並んでいる。その奥になんとコウモリ小屋があった。

コウモリ小屋。コンクリート製のしっかりとした建物だ
近くにある宿泊や教育イベントなどに使う棟にマダガスカルシロオヒキコウモリMops leucostigmaのねぐらができてしまったので、コウモリ小屋へ誘導したという。同行した番人が小屋の真下にある扉を開けると、大量のコウモリのフンや、フンが乾燥して粉状になったものや、フンについている虫がどっと落ちてきた。いったん大量の内容物が落ちてからも、中のコウモリを観察していると時々どさっと乾燥したフンが落ちてくる。外部寄生虫もいたのか手が痒い。

コウモリ小屋のマダガスカルシロオヒキコウモリ
公園内の保護区になっているところを奥まで歩いて、湿地の周りをめぐる道に霞網を2カ所かける。アンジェロは特に片方がサラモチコウモリのポイントと睨んで、一人で見張りをする。もう一つの霞網は残りのメンバーで見守る。クロヒヨドリHypsipetes madagascariensisが盛んに鳴いていると思ったらヒナがタビビトノキの根元に落ちていて、親が餌をあげにきている。クロシロエリマキキツネザルVarecia variegataの群れが賑やかに近くにやってきた。姿は3頭しか見えないが、樹冠のもっと上の方から大きな声が更に聞こえる。翌日聞いた話では1時間に1回くらい大騒ぎする習性があるそうだ。知らないで暗い森の中で聞くとびっくりしそうだ。トカゲかヤモリが鳴く声もする。
そして18時半頃、われわれが見張っていた方の霞網にサラモチコウモリが1頭かかった。かけつけたアンジェロが外して、2つの網をたたんでから、先ほどの棟が並ぶ区域に戻り、事務所か作業場と思われる部屋を借りて撮影する。職員さんがタビビトノキの葉を切ったものを運び込んでくれたので、葉の表側にとまらせてみたら、コウモリはすぐさま裏側に回り、そこで落ち着いてくれたので、やらせではあるが葉に張り付いている写真も撮る。

タビビトノキの葉に張り付いているサラモチコウモリ
一通り撮影した後、先ほどの捕獲ポイントの近くにもどり、放獣した。

放獣時に撮ったサラモチコウモリの飛翔写真
今回の旅の一番のハイライト、サラモチコウモリは、タビビトノキの若い展開する前の巻いた葉を昼間のねぐらとしている。日本には下を向いた枯れ葉の中にねぐらにするコテングコウモリMurina ussuriensisがいて、探すには枯れてくしゃくしゃになった葉を一枚一枚のぞいていくし、どうぶつのくにVol.5ボルネオ島のグヌン・ムル国立公園ではバナナやショウガの巻いた葉を見つけるたびに覗いて、ウーリーコウモリKerivoula hardwickii やムリコロホオヒゲコウモリMyotis muricolaを見つけたが、マダガスカルに来てみるとタビビトノキ自体は人手の入った場所にけっこう生えているので至る所で見つかったが、若い葉でさえ通常は人が上から覗けないくらいの高さにあり、また葉が長いので下から見ても全容はわからないことに気がついた。それでも巻いた葉があれば、ライトを後ろから当てて見たりはしたのだが、まったく見つからず、野生状態ではどうやったら見つけられるのか見当もつかなかった。

サラモチコウモリのシルエット
マロミザハ保護区では、捕獲してくれた研究者たちでさえ16年間コウモリ調査をやって初めて見たという。この保護区に行く前日は道路上で車中泊をすることになってさんざんだったが(どうぶつのくにVol.104 マダガスカルその1 サバイバル旅行)、実はその日もマロミザハ保護区では捕獲調査をやっていて、サラモチコウモリは捕獲できてなかったらしい。ちゃんと予定通りアンダシベに辿り着いていたら、やっぱりマロミザハ保護区ではサラモチコウモリはいないと早合点して、サラモチコウモリの捕れた夜には行かなかったかもしれない。そう考えると我々はほんとうにコウモリ運がよかった。そして本命のイブルイナ公園でも、日没後真っ先に霞網にかかったのがサラモチコウモリだった。マロミザハでは現地の研究者に少し遠慮していたけれど、この頃にはアンジェロともだいぶ親しくなったことだし、あれこれ写真のポーズを頼んだりした。もう一度サラモチコウモリを観察撮影する機会があって、ほんとうによかった。じっくり見ると吸盤で葉にへばりついているときには爪が浮いているのがよくわかる。

翼の前縁にある「サラ」。ペタペタしているので、糸ゴミが張り付いている
マダガスカルの北西部にはもう一種のサラモチコウモリMyzopoda schliemanni(和名なし)が2007年に記載されている。図鑑を見るとこちらはタビビトノキではなくやはりマダガスカル固有のビスマルクヤシBismarckia nobilisの葉をねぐらにするという。タビビトノキのねぐらは巻いた葉の中になるので見つけるのは至難の業だが、ヤシの葉の方が見つけ易いかもしれない。
今回は3カ所で捕獲を行ったが、どれも公園の許可をとり、リサーチャーと呼ばれるフィルードワークを普段している現地の人の協力のもと行った。
この夜は、途中デュメルリマダガスカルアオガエルBoophis tephraeomystaxを観察し、ホテルには21時頃戻った。




