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Vol.5 「母と子の別れ」

2013.5.16

動物園で生まれたカバ、特にオスは生まれ故郷の動物園から別の動物園に移動する運命があります。野生では一夫多妻の群れ形態であるカバですが、日本の動物園ではそのスペースや水の使用量の問題等があるためか、ペアとして飼育していることがほとんどです。

子の誕生は大変うれしいのですが、オスの場合は早く受け入れ先の動物園を見つけなければなりません。それは父親が一人前になった息子を攻撃して自分のテリトリーから追い出す行為をするためです。早い父親だと1年後から攻撃を始めます。この場合母親と息子を父親から隔離して飼育することになりますが、息子と母親の交配を避けるため2年前後が限界でしょうか。

 

 

また、成獣のカバのオスを別の動物園に移動することはとても大変なため、生まれたオスのカバは1~2歳で搬出することがほとんどです。

長崎バイオパーク生まれのオスたちも4頭搬出していますが、すべて1歳前後でした。現在当園にいる「百吉」くんは2011年5月28日生まれですので今月には2歳になります。このため、現在「百吉」くんの引越しの準備を行っています。この6~7月中には別の動物園に行くことになりました。

 

 

写真は「百吉」くんのお姉さんである「ゆめ」ちゃんを富士サファリパークに搬出したときのものです。長崎バイオパークのカバ池からカバを搬出搬入時はクレーンなど大型重機を2台入れての大掛かりなものになります。

母の「モモ」との別れ。生まれて住み慣れたカバ池を出て行く子カバたちの心境を思うといつも涙が出てしまいますが、別の動物園での暮らしの方がその子たちにとってすばらしい将来があると信じて今回も心を鬼にして速やかな輸送箱入れとなるべく早い経路での輸送を行えればと考えています。

 

 

思えば長崎バイオパークでカバの飼育を始めた31年前にはオスの「ムーミン」は旭山動物園、メスの「ノンノン」は円山動物園と2頭共に遠く北海道からはるばるやってきています。脚が長く臆病なキリンやシマウマよりも脚が短く落ち着いたカバの方が輸送は安心と聞きますが、やはり心配です。遠くに行く場合は特に無事到着の連絡がくるまでは心配でなりません。

母親の「モモ」との別れまで残り2ヶ月を切っています。この間はゆっくりと母子の時を過ごさせてやりたいと「百吉」のお爺さんとして思っています。

 

著者プロフィール

伊藤雅男 (いとう・まさお)

1961年東京生まれ。
1983年から長崎バイオパーク勤務。およそ30年間に12頭のカバの飼育に携わっている。趣味はカバグッズ収集と昆虫採取で、休みの日は捕虫網を持って山間部にいくことが日課。特に渡りをするチョウで有名なアサギマラのマーキング調査を15年間続けており、毎年2000~3000匹にマーキングをしている。先日は長崎から台湾への移動も記録した。最近はカメムシに興味を持ち、園内で採集したカメムシをポケットに忍ばせていることもある。

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