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Vol.15 ペアの筈が?!

2015.2.16

 2月3日と4日に上野動物園内での会議に参加してきました。両日とも昼休みの時間に急いでカバに会いにカバ舎へ行き写真を撮ってきましたが、ほぼ同じ場所で寝ていました。たぶん良く日が当たり、風も遮る居心地の良い場所なのでしょう。私は4日には長崎に戻りましたが、5日の東京は雪の予報が出ていましたので恐らく様子は違っていたのでしょうが、私の通った2日間は天気の良い穏やかな日だったので3日撮影分(1~2枚目)も4日撮影分(3~4枚目)もほとんど同じです。

 

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 現在、上野動物園にはオス1頭が飼育されています。この個体は札幌市円山動物園生まれのジロー(31歳)で当園のノンノンの弟なのです。なんか親戚に会いに来ている感じです。上野にはメスが国内から移動するうわさがありますので、次に来た時はペアになっていることを期待しています。

 

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 出張中での上野動物園のカバのことはこれくらいにして、前回の文書の最後が中途半端に終わってしまったので、その後を書かなければいけませんね。

 

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 昨年(2014年)の5月4日にテレビ局の撮影中に、ペアと飼育しているメスのモモ(20歳)とオスの出目太(2歳)が不可解な行動をしているのに気がつきました。それは陸場にいた2頭だったのですが、モモが出目太を水中に誘うような様子でした。「あれ?もしかするとこの2頭は?」と思ったその後に私の目にその光景が写りました。

 何とモモは水中で横になって出目太に母乳を与え始めたのです。テレビの撮影中だったこととカバ池に水が濁っていたことで、その姿を写真で撮ることが出来ませんでしたが間違いなく授乳風景でした。出目太は何度も息継ぎをするため水面に鼻を出してモモの後足の付け根付近に向かって潜っていきます。その後、満足した表情で寝てしまいました。

 ペアとして飼育していたのですが、いつの間にか親子になっていたようです。

 思えばモモの第4子の百吉(現在旭山動物園)よりも若いわけで、モモが異性として見ていることはないと私も思っていました。だから、私も出目太が来園した時にマスコミには「この2頭 の子供は早くて3年後くらいかな。」と説明していました。

 モモは百吉が旭山へと旅立つ直前までは時々母乳を与えていました。しかし、百吉が出発したのが2013年7月2日で前日の1日には母子を分けています。そして私が目撃したのが、2014年5月4日なのです。2頭の行動を見てこの日が初めて飲んだようには思えません。出目太が来園したのが、2013年11月7日で、モモと同居を始めたのが、12月4日でした。この頃は飼育担当者も私も常に観察を行なっていることや2頭にまだ距離感があったのですぐにこのような関係になっていないと断言できます。また、冬期は水が冷たいのであまり池に入りません。

 以上のことからこの2頭の親子関係は池の水温が上がってきた2014年の4月頃と考えるのが妥当でしょう。そうなるとモモは百吉に最後の授乳後、9ヶ月間をおいて出目太に母乳を与えたことになります。また、出目太が来園するまでの間も4ヶ月間くらいはあるので母乳は与えなくなると止まってしまうものだと思っていました。

 私はモモが自分の子よりも小さいカバを見て我が子と思い母性本能により母乳が出てきたと考えています。

 その後、カバ担当者やその周辺で仕事をする職員がこの水中授乳を複数人目撃しています。ただ残念なのがその証拠写真を誰一人とも撮れていないことです。そしてその夏に陸場でモモが出目太に授乳しているのを担当の老田学海くんが写真を撮りました。これがその写真ですが、乳首が反対側だったので出目太の口は写っていませんが、彼は間違いなく授乳だったと教えてくれました。反対側から撮影しようとすると気が付いて授乳を止めてしまったようです。

 現在ではその光景は見ることはありません。2015年はようやく親子からペアに変わっていくのでしょうか?私も今後のこの2頭を暖かく見守っていきます。

著者プロフィール

伊藤雅男 (いとう・まさお)

1961年東京生まれ。
1983年から長崎バイオパーク勤務。およそ30年間に12頭のカバの飼育に携わっている。趣味はカバグッズ収集と昆虫採取で、休みの日は捕虫網を持って山間部にいくことが日課。特に渡りをするチョウで有名なアサギマラのマーキング調査を15年間続けており、毎年2000~3000匹にマーキングをしている。先日は長崎から台湾への移動も記録した。最近はカメムシに興味を持ち、園内で採集したカメムシをポケットに忍ばせていることもある。

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