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Vol.16 人工哺育のカバのミルクは?

2015.3.15

 今年の3月6日で当園の人気者のモモは21歳になりました。思えば21年前の3月はこのモモの人工哺育で大騒動となっていました。

 1994年3月6日の夕方にモモは生まれました。長崎の3月上旬はまだまだ寒く、水温も10℃前後でした。このためなのか、母親のノンノンは陸場でモモを出産しました。その後、寒さのためモモは衰弱してしまいその夜に母親から取り上げて人工哺育に切り替えたのです。

 体温が低下しており、体温計を肛門に差し込み測定してみると目盛まで上がってこないのです。35℃以下になっていました。

 

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 慌てて飼育員用の風呂の湯船にモモを入れて温めました。1時間以上も掛かりましたが、ようやくモモの体温が安定し、「ブーブー」と鳴き始めたところで大切なことを忘れていたことに気付いたのです。

 命を守ることばかりを考えていて必死になっていたため、モモに与える母乳をどうするかを考えていなかったのです。

 子を取り上げたため、母親のノンノンは気が立っていますので母乳を搾り取ることは到底できない状態でした。カバの母乳の成分を知らなかった私はこれらの情報に詳しい姫路セントラルパークの佐藤哲也氏(現那須どうぶつ王国園長)に連絡したところ、すぐにカバを含めた様々な動物たちの母乳の成分表を送ってもらいました。その表を見ると入手し易い動物ではヤギの乳性分に近かったことが分かりましたが、当時ヤギはバイオパークにはいなかったことと、今のようにヤギミルクが簡単に入手出来なかったのでヤギのミルクは断念しました。

 

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 他には牛乳が良さそうなので、妻の友人夫婦が経営している林牧場に連絡してみたところ、2~3日前に出産したばかりのジャージー牛がいることを教えてくれました。これはとても幸運でした。バイオパークから片道30分くらいの西海市西海町にモモの乳母がいたのです。すぐにそのジャージー種1頭分の母乳を頂けるようにお願いして人工哺育の体制が整ったのでした。

 途中下痢等もありましたが、ミルクにヨーグルトなどを混ぜて与えるなど工夫をしながら行なったことを覚えています。

 当時は国内でのカバの人工哺育の成功例はなく、母乳の量や回数などすべて手探りで行なってきました。

今思えばやはりこのジャージー種の牛乳、それも初乳に近いものを与えられたことがモモが生きることが出来た最大の要因でしょう。林牧場とその後カバコという名前になった乳母であるジャージー牛のおかげです。

 

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今ではモモは4頭の子を自分で育てあげ、推定1.5トンの肝っ玉母さんになっています。

著者プロフィール

伊藤雅男 (いとう・まさお)

1961年東京生まれ。
1983年から長崎バイオパーク勤務。およそ30年間に12頭のカバの飼育に携わっている。趣味はカバグッズ収集と昆虫採取で、休みの日は捕虫網を持って山間部にいくことが日課。特に渡りをするチョウで有名なアサギマラのマーキング調査を15年間続けており、毎年2000~3000匹にマーキングをしている。先日は長崎から台湾への移動も記録した。最近はカメムシに興味を持ち、園内で採集したカメムシをポケットに忍ばせていることもある。

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