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Vol.12 オオセンチコガネ採集糞闘記

2014.9.14

 オオセンチコガネは紫色や緑色などの金属光沢を持つとても美しいセンチコガネ科の甲虫です。長崎バイオパークの園内には同じ科のセンチコガネは生息していますが、より大型でより美しいオオセンチコガネは居ないのです。

 この美しいオオセンチコガネを昆虫館で展示するために毎年9月に長崎県内の牧場に行っています。

 

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 センチコガネのセンチとは長さを示すcmではなく、昔のトイレの呼び名であった雪隠(せっちん)という言葉から由来しているのです。すなわち、便所コガネだったのです。雪隠と呼ばれていた頃のトイレは当然汲み取り式であり、その臭いに集まってきたと思います。以前、ある山の上の駐車場のトイレが汲み取り式で、その周りにたくさんのオオセンチコガネとセンチコガネが飛んでいたことがありました。

 オオセンチコガネを図鑑で調べると、そのエサは牛糞、馬糞、鹿糞、人糞などと書かれています。センチコガネなど動物の糞をエサにしている甲虫たちを糞虫と呼んでいます。ファーブル昆虫記に登場するタマオシコガネや日本にも住むダイコクコガネ、マグソコガネ、エンマコガネなどがその糞虫です。

 

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 これらの糞虫は通常は糞に集まっていますので採集するときはまず糞を探します。野性のシカなどの糞を見つけることは難しいため、ウシを放牧している牧場が一番効率的です。木陰などに牛糞があるとそれを木の枝などで丁寧に探します。ひっくり返したりかき混ぜたりすると、突然糞の中から金毒光沢が現れます。この時はオオセンチコガネの美しさを多いに感じますが、逆に糞の中にいるのにこんなに美しい必要はないのではと不思議に思うこともあります。発見したオオセンチコガネは途中のコンビニで手に入れた割り箸で取り、ケースに収容します。このケース内には付近にある落ち葉を入れておくと虫に付着している牛糞が取れて汚れが取れます。

 これらの作業の時に他人に見られる時がありますが、かなり怪しい人物として警戒されているのがなんとなく分かります。日常動物の世話を行なっている私には牛糞に臭いはあまり悪い感じはありません。ただし、採集時に時折、顔や手に付くことがあります。まさしく、糞戦、糞闘した感じです。

 

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 採集したオオセンチコガネのエサですが、長崎バイオパークは動物園なので様々な糞が用意できます。以前葉10種類くらいの動物の糞を与えてみましたが、人気ナンバーワンはカピバラの糞でした。このため、オオセンチコガネを飼育している時は毎朝カピバラの展示場に行き、新鮮な糞を頂いています。展示水槽にも当然エサの糞を入れていますが、お客様の反応は悪いものではないようです。

 糞を崩して土に埋める姿を見て、自然の中で糞を土に返すという重要な役割を行なっているすばらしい昆虫であることを多くのお客様に感じていただければ幸いです。

 

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著者プロフィール

伊藤雅男 (いとう・まさお)

1961年東京生まれ。
1983年から長崎バイオパーク勤務。およそ30年間に12頭のカバの飼育に携わっている。趣味はカバグッズ収集と昆虫採取で、休みの日は捕虫網を持って山間部にいくことが日課。特に渡りをするチョウで有名なアサギマラのマーキング調査を15年間続けており、毎年2000~3000匹にマーキングをしている。先日は長崎から台湾への移動も記録した。最近はカメムシに興味を持ち、園内で採集したカメムシをポケットに忍ばせていることもある。

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